「第13回びはく学芸祭」の研究報告が7日から、動画投稿サイト・ユーチューブの飯田市美術博物館公式チャンネルで配信されている。同館学芸係長の槇村洋介さんが、大正から昭和初めまで、竜丘小学校で盛んに取り組まれた自由画について紹介。スタッフや地域の研究団体によるポスター展示も3月まで、追手町の同館で行われている。
スタッフと市民との学際的な交流を目的としたイベントで、毎年開催。学芸員による研究報告と、スタッフ・地元団体が研究活動をまとめたポスターを展示して参加者にプレゼンテーションする、ポスター形式の発表を行ってきた。
今回は新型コロナウイルス感染症対策として、1年ほど前から試行的に運用してきたユーチューブの公式チャンネルで、研究報告を配信。ポスター発表は掲示のみ行うことにした。
槇村さんは「竜丘小学校の自由画―自由教育は光りを失わない―」と題して発表。自由画の先進地として全国に名を知られた同校が所蔵する子どもたちの絵画の特徴や、自由画をはじめとした自由教育を推進した同校教員の木下紫水(茂男)(1882~1951年)の活動などを解説した。
自由画は手本をまねるのではなく、心に感じたことを自由に描く絵画。洋画家・山本鼎が提唱し、1919(大正8)年に第1回全国児童自由画展覧会を上田市で開いた。
教科書を使わない、子どもの個性を尊重した教育を進めていた紫水は同年、鼎の協力を得て第2回展を同校で開催している。
槇村さんは、紫水が教育で重視すべきことについて述べた雑誌の投稿から「絵の良し悪しを賞賛するのでなく、子ども一人一人に寄り添い、それぞれの心に感じた美を大切にしていた」と指摘。
「32(昭和7)年に紫水が同校を去り、日本が戦争への道を歩み始めると自由画は描かれなくなるが、絵に表れる当時の子どもたちの美の豊かさは、現代の人の心に響く。100年経った今も、自由教育は光を失っていない」と話していた。
今月28日まで配信する。17団体・個人が研究成果をまとめたポスター展示は3月14日まで、同館ロビーで行われている。入場無料。問い合わせは同館(電話0265・22・8118)へ。
◎写真説明:スタッフや地元団体の研究成果をまとめたポスター展示(市美術博物館で)