大鹿村に江戸時代から伝わる「大鹿歌舞伎」(国選択無形民俗文化財)の秋の定期公演が18日、大鹿村鹿塩の市場神社で開かれた。さわやかな秋空のもと、役者が大見得(みえ)を切るたび、集まった観光客ら約2000人から大きな拍手が起き、おひねりが飛んだ。
外題は、平安時代に源氏に滅ぼされた奥州安倍一族の壮絶な復讐を描いた「奥州安達原」の「宗任(むねとう)物語の段」と「袖萩祭文(そではぎさいもん)の段」の2幕。どちらも役者たちがきらびやかな衣装で登場し、浄瑠璃太夫の弾き語りに合わせて大きく見えを切ったりして観客の拍手を誘った。
見せ場では観客から歓声が上がり、次々とおひねりが投げ入れられた。舞物語がクライマックスに近づくにつれ舞台上は無数のおひねりで、まるで雪が積もったよう。静岡県浜松市から夫婦で訪れた三石芳子さん(61)は「初めて見物しましたが、見事な熱演に感動しました」と笑顔だった。
この日は天候にも恵まれ、境内は開演前から観客でびっしり。立ち見も出た。子ども連れも多く、ござを広げるなどして小学生から70代までの役者による伝統の地芝居をゆったり楽しんでいた。