大鹿村に江戸時代から伝わる大鹿歌舞伎の保存と伝承に取り組む「大鹿歌舞伎愛好会」が26日夜、9月のイタリア公演に備え、鹿塩地区館で稽古を始めた。海外公演は1992(平成4)年のドイツ以来18年ぶり。
農山村の景観や伝統文化などを守る活動に取り組むNPO法人「日本で最も美しい村」連合に加盟する同村。同村などによると、世界連合の会議が9月4日からイタリアのサン・ジネーズィオ町で開かれ、その中で特別公演するという。
メンバーは愛好会会長の下沢敏さん(75)、笹木猛さん(72)、北村尚幸さん(49)=いずれも大河原=の3人。
外題は、初陣から瀕死の状態で帰ってきた若武者「十次郎」が味方の敗北を告げて静かに息を引き取る場面などを描いた「絵本太功記 尼ケ崎の段」の一部分。本来だと役者9人で演じるが、役者は十次郎役の下沢さんのみ。笹木さんはカギ打ち、北村さんは浄瑠璃太夫を担当する。
この日は台本の確認から始まり、動作や時間配分、イタリアの会場を想定し立ち位置などもみっちり。十次郎を演じるのは10年ぶりという下沢さんだが、浄瑠璃太夫の弾き語りが始まるとスムーズに18歳の若武者を演じ、大きく見えを切ったりもした。雰囲気で伝わるよう動作を大きくするなど試行錯誤した。
下沢さんは「どこまで伝わるか分からないが、精いっぱい演じ、大鹿歌舞伎のいいところを見せたい」と張り切っていた。9月2日の出発まで同会場で稽古を重ねる。
上演時間は15~20分程度。上演を前に、隈(くま)取りなどの化粧の様子や衣装の着付け風景なども披露する。75歳の男性が18歳の若者に変身していく様子も楽しんでもらう計画だ。