天龍村坂部の大森山諏訪神社で4日夜から5日昼にかけ、国重要無形民俗文化財の湯立て神楽「坂部の冬祭り」があった。夜通しで舞を繰り広げ、5日午前5時過ぎに、主役の赤鬼「たい切り面」が登場。勇ましく地を踏み、鉞(まさかり)を振るって火の粉を巻き上げた。
3日の「向方のお潔め祭り」、5日の「大河内池大社例祭」を含めた天龍村霜月祭りの1つ。旧神原村の3社で旧暦の霜月(11月)に行われていた湯立て神楽で、原型をほぼとどめた状態で伝承されている。
天竜川に漬かって身を清めた「神子」たちが、4日夕から神々を下の森(火王社)から同社へ運ぶ「お練り」で開幕。氏子たちが翌朝まで、社殿内の舞堂(まいどう)で舞や湯立てを延々と繰り広げた。
満天の夜空が白みはじめた午前5時10分ごろ、赤装束のたい切り面が登場。祭り囃子に合わせて鉞を振り、ズドン、ズドンと両足で床を踏み鳴らし、邪気を払った。
囃子の調子が変わると祭りは最高潮。神子の持つ燃えさかるたいまつに鉞が激しくぶつかり、四方へと火の粉が飛び散った。
舞堂前には多数の氏子や愛好家らが集まり、一挙手一投足に沸いてフラッシュの光を浴びせていた。
坂部の冬祭りは同地区の旧家・熊谷家当主直吉の夢占いをきっかけに、室町時代の1428年(正長元年)に始まったとされる。氏子たちが湯を沸かした釜の周りで神事や舞を繰り広げ、無病息災や子孫繁栄を願っている。