飯田下伊那地域と愛知県東部、静岡県西部の歌舞伎団体が共演する「第25回三遠南信ふるさと歌舞伎交流 下條大会」(実行委員会主催、南信州新聞社など後援)が16日、下條村のコスモホールで開かれた。飯伊の下條、大鹿の両歌舞伎保存会をはじめ、3圏域の計6団体が出演。県内外から訪れた観客らが情感あふれる演目の数々を楽しんだ。
交流大会は地域で継承する地芝居の発信や保存団体の交流などを目的に始まり、南信では3年ぶり、下條村では6年ぶりの開催。静岡県からは雄踏、湖西、浦川、愛知県からは豊橋の各団体が出演した。
このうち、浜松市西区の雄踏(ゆうとう)歌舞伎保存会「万人講」は、大名が愛人に会いに行くために衾(ふすま)(掛け布団)をかぶせた替え玉を残したが、見破った妻が逆になりすまして帰りを待つ「身替(みがわり)座禅」を披露。上機嫌で帰って逢瀬を語る大名と衾の中で怒りに震える妻の仕草、衾を取って妻だと分かった瞬間の大名の驚きなどをこっけいに演じ、会場の笑いを誘った。
下條村睦沢の男性(72)は「三遠南信の歌舞伎がいろいろ見られるのがいい。身替座禅は現代にも通じる内容で、面白おかしく楽しめた」と笑顔で話していた。
各団体は約1時間を目安に順に演じた。トリを務めた下條歌舞伎保存会は「奥州安達原(おうしゅうあだちがはら)三段目 袖萩祭文(そではぎさいもん)の段」を熱演。勘当された両親を訪ねるも、家に入れてもらえずに嘆く袖萩を娘・お君が気遣う見所では、会場から温かい拍手が沸き起こった。