飯田市教育委員会は18日に開いた定例会で、同市仲ノ町出身の日本画家、菱田春草(1874~1911)が東京美術学校時代に描いた「鎌倉時代闘牛の図」(1894)を市有形文化財に指定した。市文化財審議委員会の指定答申を受けて決定した。
同作は1894(明治27)年、春草が19歳の時に制作。都路で激しく争う2頭の牛と群衆の姿を描いており、同校の学内展覧会で第2席を獲得した。
鮮やかな色彩と明快な輪郭線を特徴とし、伝統的な大和絵の筆法を用いながら背景に金泥で霞を描いて、西洋美術の遠近法や陰影法をもとにした空間表現を示している。
同校では、明治という新時代にふさわしい美術の創造を目指した校長・岡倉天心の方針で、日本の古典絵画の学習とともに西洋の写実法や遠近法、陰影法の指導が行われていた。
市文化財審議委では「春草の学習成果を示すと同時に、東京美術学校の教育方針を体現する作品であり、日本画の近代化を目指した天心の理念を反映した作品」と評価し、文化財指定が適当と判断した。
同作は学内展覧会終了後、春草を援助していた兄・為吉へ贈られ、以降は為吉の家族が所有。昨年5月から市美術博物館に寄託され、ことし3月に市が家族から購入した。