春草生誕140年記念シンポジウム

文化・芸能

[ 2014年 10月 6日 月曜日 9時07分 ]

春草記念シンポジウム 飯田市美術博物館の春草生誕140年記念シンポジウムがこのほど、同館講堂で開かれた。「日本画の誕生とこれから」と題し、女子美術大学教授の北澤憲昭さん(美術史家)と東京芸術大学教授の斉藤典彦さん(日本画家)、同館館長の滝沢具幸さん(同)の3人が、菱田春草の時代を軸にした日本画論を展開した。

 

 北澤さんは始めに、日本画という言葉の成り立ちについて説明。フェノロサの『美術真説』を引き合いに、国民国家の形成のために日本画が必要とされた状況や、近代日本画の形成に狩野派を基礎とした理由などを示した。

 

 そこからスライドで狩野芳崖の作品「仁王捉鬼」を映写。西洋の顔料を使った明治初期の新しい日本画の試みに言及した。さらに雪舟、狩野元信から菱田春草らの作品を次々と映写。3人がコメントを加えていった。

 

 雪舟の「秋冬山水図」について斉藤さんは「うまい、筆が立つ」とひと言。滝沢さんが「線や面や点の考え方が西洋的。セザンヌに比較すれば、ものの考え方が非常に近い」と分析すると、北澤さんも「立体物を平面に翻訳する発想法がセザンヌに近い」とした。

 

 春草の作品に関しては「菊慈童」について滝沢さんは「朦朧体の特徴が一番出ている」、北澤さんは「空間構造が構築的」と分析。

 

 渡米中に制作したとされる「夕の森」について、滝沢さんは「西洋的要素と水墨画的要素があり“日本”の意識がある」、斉藤さんは「限られた絵の具や画材の中で確信を深めたのがよく現れている」、北澤さんは「白黒写真」との関連性を指摘して「スナップ的な視線を感じる」と評した。

 

 「落葉」について滝沢さんは「日本人が自然体で描いた絵」、斉藤さんは「平面的に色を置いていく、きっちり描くという作品」、北澤さんは「春草の問題作で、距離を空間に翻訳した作品」とそれぞれ分析。また「黒き猫」については、滝沢さんが「日本画を意識し、自分の中に取り込んだ大傑作」と絶賛した。

 

 この後、現代日本画の作品例として滝沢さんと斉藤さんの作品を映写。それぞれが自作紹介を交えて制作者の立場から日本画の概念を語った。

 

 滝沢さんが日本画の絵画性の高さや表現の広さを強調すると、斉藤さんは「あえて日本画家という言い方にはこだわらない」と言明。北澤さんはグローバリゼーションで文化が混合されていくことを危惧し、日本画は「一つの抵抗拠点だ」とした。

 

 北澤さんが「日本画の持っている濁り、不純さを可能性として捉えていくべきではないか」と提言したことで、今後の日本画の可能性について意見が出た。「筆をつかう感覚から工芸的につくられるのが日本画。そこら辺に可能性があるのでは」と斉藤さん。滝沢さんも「絵画性などさまざまなものを含めて日本画は可能性を持っている」と期待を込めた。

  

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