飯田市上村、南信濃に伝わる国重要無形民俗文化財の湯立て神楽「遠山の霜月祭り」が1日、南信濃中立の正一位稲荷神社と同小道木の熊野神社を皮切りに幕を開けた。氏子と多数の聴衆が湯釜を囲み、生命力の再生を祈るとされる湯立て神楽を興じた。15日に南信濃八重河内で開かれる正八幡神社まで、9社で繰り広げられる。
八百万(やおよろず)の神々を招き、願い事をするための神事を行った後、2つの釜を囲んで男性たちが装束舞を披露。湯を煮えたぎらせると、稲荷神社では午後9時過ぎ、熊野神社では10時半ごろに「火の王」とも呼ばれる祭りの主役、大天狗が登場した。
「ヨーセ」の掛け声に乗り、大天狗が釜に素手を入れて邪気を払うように湯を切ると、大歓声。飛び散った湯が燃えさかるまきに当たって白煙が上ると、会場は興奮に包まれた。
稲荷神社では、交流を続けている飯田市立浜井場小学校の児童たちが笛を吹いて祭りを盛り上げた。
熊野神社では37に及ぶ多彩な面(おもて)が次々と登場し、聴衆を沸かせた。
鎌倉時代に伝えられた宮廷の湯立て神楽に、遠山郷を支配した領主、遠山土佐守一族の死霊を慰める鎮魂の儀式が後に加わり、独自の形式で伝承されている。
「霜月」の名称は陰暦11月に行われることに由来しており、最も日照時間が短くなるこの時期に祈りを捧げることで、「万物に再び生命力がよみがえる」と信じられている。
熊野神社祭典委員長の梶間睦雄さんは「地元を離れた多くの仲間と一つの湯釜を囲う重要な機会。にぎやかに開催することができて良かった」と話していた。
以降の日程は次のとおり。カッコ内は面登場時間の目安。7日=正八幡宮・上村中郷(翌日午前5時)、11日=正八幡宮・上村上町(翌日午前5時半)、13日=諏訪神社・南信濃和田(午後9時)、拾五社大明神・上村下栗(翌日午前0時)、14日=正八幡宮・上村程野(翌日午前4時半)、正八幡神社・南信濃木沢(翌日午前2時半)、15日=正八幡神社・南信濃八重河内(午後9時)