8月の日照時間が平年の51%に当たる98・9時間にとどまった飯田下伊那地域では、日照不足や長雨の影響が野菜を中心とする農作物に広がっている。JAみなみ信州営農部によると、必要な日照量が確保できないため、キュウリやトマトの収量が落ち、十分な収入が得られない生産者も増えている。
長野地方気象台のまとめによると、飯田の8月の日照時間は、同月では1899年の統計開始以降最少で、9月に入ってからも伸びず、8日までの累計は27・7時間にとどまっている。
飯田市鼎下山でハウスもののトマトとキュウリを栽培している男性(48)は、トマトの着色不足やキュウリの生育遅れに苦労している。
トマトは毎年6―10月に出荷しているが、7月後半から現在まで、十分な日照が得られないことから着色が進まず、出荷量は例年の3分の1程度まで減少。着果不良もあり、今後に日照が戻ったとしても影響は続くと見ている。
キュウリは長雨などにより生育が遅れ、葉や枝、根の育ちも一時悪化。湿気により、禍斑病などの病気にかかりやすくなり、木の状態を取り戻すための手入れに時間を要した。収量は今後、少しずつ戻ると予想している。
「良い年もあれば、悪い年もある。自然と共に生きる農家の宿命で仕方がない部分もある。収量減の影響を最小限にするため、手入れをしっかりしたい」と前を向いた。
JA営農部によると、日照不足や長雨は夏野菜の収穫本番を直撃しただけに、痛手を負った農家は少なくなく、露地栽培の一部はすでに収穫期を終えているため、挽回が困難になっているという。
出荷最盛期を迎えている果実の栽培にも、糖度低下などの影響が出ている。
日照不足の影響は全国的に広がっており、農林水産省が2日に発表した主要野菜14品目の価格見通しでは、9月上旬もキュウリやハクサイ、ナス、ピーマンなど7品目が平年を超えると予想されている。
9日は青空が広がり、飯伊でも朝から太陽光が降り注いでいる。気象台によると、今後の日照時間は12日まで平年を下回る可能性が高いものの、以降は少しずつ回復し、月の後半は平年並みになる見通しという。