クリスマスの装飾や正月飾りに使うナンテンの出荷が、豊丘村など飯田下伊那地域の産地でピークを迎えている。ことしは開花期となる梅雨期間中に雨が少なかったことから着果量が伸び、「これまでで最高の質」になったと生産者。房や枝に切り分け、年末まで出荷作業を続ける。
58年前に生産を始め、飯伊にナンテン栽培を広げた豊丘村の武田久さん方でも出荷の最盛期を迎えている。妻と2人、傾斜地に広がる30アールのほ場ではさみをにぎり、たわわに実った真っ赤な房を次々と切り取った。
標高650メートル。庭木として植えたところ、成長が進み、栽培に適していることを知った。先代の英実さん(故人)と独自に品種改良を進め、堀越の「越」をとった「越錦(コシニシキ)」が完成。周囲に種を配り、自ら生産振興を図ってきた。
「長いこと携わってきたが、ことしは一番のでき」と武田夫妻。「ナンテンを飾って難を転じ、福を呼び込んでほしい」と口をそろえていた。
出荷作業は今月下旬まで続け、房と枝の2系統で収穫、出荷する。
管轄するJAみなみ信州によると、飯伊は岐阜県の郡上八幡市に次ぐ第2の産地で、ことしも名古屋や関西方面を中心に出荷する計画。出荷量は房で昨年の2・35倍にあたる4000ケース(1ケース=5キロ)、枝で6000本増の2万本を予定している。