11月に県議会リニア中央新幹線建設促進議員連盟会長を辞任した飯田市選出の古田芙士県議(自民党)。伊那谷ルート(B案)の実現を求めて結束する県議会に不満を強め、自由に発言ができる立場を得て「地域の代弁者として南アルプスルート(C案)の推進に全力を注ぐ」と決意を新たにしている。辞意を固めた理由や今後の展望を聞いた。
議連会長を辞任した理由は
「議会は9月定例会で事実上のBルート決議に踏み切った。我々も含め、17人が時期尚早だと反対したにもかかわらず、数の理論で押し切られてしまった。Cルートを願う地元飯田下伊那地域の民意、長野の議論の遅れを懸念する他県の声をきちんと県に伝え、理解してもらうことが重要になっている。自由な立場で、地域の声を代弁できるようにするため、辞めることを決意した」。
県民の総意を決めるべき決議で、3分の1が反対してもなお決議した理由は
「諏訪や上伊那が強い危機感を募らせ、県に積極的な動きを求めているのが決議案提出の理由。数の理論で強行採決になってしまったが、本来の議会のあるべき姿ではない。暴挙だといってもいいと思う」
JR東海の調査報告書には記載されたものの、飯伊の声はしっかり県に反映されているのか
「我々は議会で、幾度も南アルートを求める地元の意見を届けているし、説明会でもそうした声は挙げられている。ただ、残念なのが県や議会にCルートを求める陳情や請願が1件も入っていないことだ。Bルートを求めるものが多数あるなか、ゼロでは反対するにしても明確な根拠を示せず、苦しんだ部分がある」
地元はしっかり声を出せ、そう発言することが増えている
「地元では飯田駅が確実にできるという楽観的な空気が広がっているが、県の現場にいるものとしたらそれは危険だと感じる。飯伊にとってリニア駅の誘致は史上最大のインパクトとなる。加えて、JR東海が南アルートなら飯田に駅をつくると言っている。南信州広域連合や市町村がそれを明確に応援しない理由が分からない。波風を立てると中間駅の費用を県が負担してくれないと困るという声も聞くが、飯伊が他地域と異なる自らの主張をしたとしても、そういうことはありえないし、それを調整するのが我々県会議員の責務だ。ここ1年が真の正念場。地元はもっと声を大きくして南アルート支持を訴えてほしい」
県は2駅設置を訴えて飯伊に配慮を示し、「伊那谷ルートが県民の総意」とする構図を崩したくないように見える
「JR東海の前提は1県1駅。他県との平等性を踏まえれば、県がいう2駅設置はまやかしでしかない。飯田駅は南アルートでしかできないことを、地元行政も市民も再確認するべきだ」
JR東海は県との調整を自らの努力で解決したいとしている。第3者による調整を行わない場合は、県内部の議論がより重要度を増す
「事業主体も前提も違う20年前の議論を踏襲するのではなく、ゼロからルートについて議論すべきだ。私としては県にCルートの正当性を訴える活動に力を注ぎたい。南アルートを願う地域の声を着実に届け、県の考え方を質したい」
(聞き手=佐々木崇雅)