県議会がリニア中央新幹線ルート計画をめぐる決議案を採択

リニア中央新幹線

[ 2009年 10月 11日 日曜日 8時06分 ]

 JR東海のリニア中央新幹線計画をめぐり、県議会は9日の本会議で「より多くの県民が利用できるルート」による整備を求める決議案を採択した。事実上、南アルプスを北側に迂回する伊那谷ルート(B案)を要望する内容。飯田下伊那選出の4県議を含む17人が反対したものの、賛成多数で可決した。一部地域が歴史的背景を根拠に数で押し切った形だが、総数の3割に及んだ反対が「伊那谷ルートは県民の総意」とする言葉に疑問を投げ掛けている。
 
 南アルプスルートによる整備を願う声が強い飯伊への配慮から、伊那市区選出の向山公人議員(創志会)が6月に提示した議案を修正。当初、模索していた「伊那谷ルートによる実現」を求める表現を抑え、複数駅の設置にも言及して「より多くの県民が利用でき、地域経済の活性化に大きく寄与するルートや、複数駅の設置が望ましい」とした。
 
 採決は賛同者が起立する形で行い、議長を除く54人が臨んだ。飯伊選出の全4県議とリニア計画に否定的な共産党県議団の7人とトライアル信州の4人、加えて長野市選出の高島陽子氏(改革・緑新)、松本市選出の北山早苗氏(無所属)の計17人が反対したが、賛成多数で可決した。
 
 直接的表現は避けているものの、決議文には1989年から伊那谷ルートの実現を願ってきたとする経過説明や、20年にわたる取り組みの重さを踏まえるよう求める文言もあり、実質的には「伊那谷ルート決議」となった。
 
 本会議終了後、会見に臨んだ望月雄内議長は「長年(求めてきた)の伊那谷ルートを前面に押し出す決議案になり、県民の意思が示されている。配慮した表現になっているが、歴史の中の伊那谷ルートが、しっかり伝わる内容になり喜んでいる」と評価。反対者が多かったとする指摘には「多数決による議決は民主主義のルールに沿っている。過半数に達すれば、それは県民の意思だととらえている」と語った。
 
 一方、飯田市区選出で県議会のリニア建設促進議員連盟会長を務める古田芙士県議(自民党)は「民間主体でプロジェクトが進められているという経過を踏まえ、本来は新しい時代の対応を考えなければならない問題。一部地域のエゴによる決議案だ」と不快感を露わにし、「議会の3分の1、17人が反対するなかで決議するのはいかがか。議会の質が落ちている」と語った。
 
 議会の決議を受け、村井仁知事は「ルートについてはいろいろな理解があり、その中でできるだけ最大公約数を取ろうとして作られた案だが、それでも合意を得られなかったのは仕方がない。そうした(地域間の)微妙なあやがこの問題についてあることは百も承知している。(決議を受けて)特段、これまでと違うスタンスを取るつもりはない」と話した。
 
   *    *
 
 9日に県議会が可決した事実上の伊那谷ルート決議。6月から模索し、ようやくたどりついた一つの意思決定だったが、その理念とはうらはらに、浮き彫りにしたのは意見が分裂する県内の実態や、議会の資質の低さだった。
 
 南アルプスルートによる飯田駅設置を願う飯田下伊那地域に対し、見せかけの“配慮”を示したものの、本質は飯伊の民意を無視した偽りの「総意」づくりだった。
 
 賛成多数で可決したものの、反対が3割に及んだことで、総意とはかけ離れた実態を露呈。今後の主張の根拠とするには、お粗末すぎる結果となった。
 
 反対した飯田市選出の小島康晴県議(改革・緑新)は「適時適切ではない決議を多数決での採択に踏み切ったため、価値の低いものになった」と指摘した。
 
 同市選出の古田芙士県議(自民党)は「議会の質が落ちている」と、議会の資質に疑問を投げかけた。
 
 ルートや駅の誘致を願い、地域ごとに意見が分かれるのは当然で、市町村の議会が決議に踏み切るのは恒例行事ともいえる。
 
 しかし県全体に目を向けるべき県議会が、一部の地域の声だけを取り上げ、異なる意見を無視する姿勢は批判されるべきだ。
 
 「過半数に達すれば、それは県民の意思だ」と正当性を主張した望月雄内議長。その席で「今定例会で念願の議会基本条例を制定できた」と胸を張った。
 
 「議会は県民の意見を的確に把握し、県政に反映させること」。同条例の第3条4項だ。
 
(佐々木崇雅)
 

  

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