阿智村教育委員会は9月30日、阿智第一小学校で膠絵(にかわえ)ワークショップを開いた。同校6年生34人が安布知神社拝殿の天井画の模写と彩色に挑戦した。
同校にほど近い安布知神社(同村駒場)は、368年に始まったとされる。1573年に領主小笠原信貴が近江国三井寺から新羅明神を勧請して社殿を造営した。2015年には本殿と拝殿の2棟が県宝に指定された。
拝殿内の木材を格子状に組んだ天井には、中央に雲、周囲に虎や竜、鯉、富士登山、花などの絵や文様が144点描かれているが、近年は絵の具のはく離が進んでおり、同神社は7月から県・村の補助金を活用し伝統工法による修復事業を行った。
ワークショップは、修復が完了したのを機に、村の文化財保護への理解と地域の宝である文化財に愛着をもってもらおうと村教委が企画。講師として天井画の修復に携わった天野山文化遺産研究所(大阪府)の山内章さん(61)を招いた。
この日、児童たちは実際に天井画を見学した後、虎、龍、鯉、鳥の絵から1つを選んで下絵を決定。杉板にカーボン紙と鉛筆を使って転写し、墨でふち取った。
続いて行った彩色には、天井画が描かれた江戸時代に使われた絵の具と同じ、虫や植物、土などから色素を抽出して作った顔料と牛の膠を混ぜたものを使用。山内さんの指導を受けて顔料と膠を練り合わせるところから体験し、元の絵に捉われずそれぞれ自由に着色した。
3羽の鳥をそれぞれ赤や黄、藍色で彩色した女子児童(12)は「羽がきれいに見える色を選んだ。膠の絵の具は色が濃く出て乾きやすいなと感じた」。龍の絵をカラフルに塗った男子児童(11)は「実物は色が薄くて古風な感じがしたので、濃い色を使ってきれいにした」とそれぞれ話した。
子どもたちを指導した山内さんは「今日の体験が子どもたちの記憶に残り、将来の文化財保護につながれば」と期待を寄せた。
◎写真説明:膠の絵の具を使って彩色した