リニア中央新幹線の2027年開業を目指すJR東海は5日、走行時や停車時に発生する磁界の測定を山梨リニア実験線で行った。沿線都県市の担当者や報道陣に公開し、「国際ガイドラインの基準値を大きく下回っている」などと安全性を強調した。
9月に公表した環境影響評価準備書に対し、健康への影響を不安視する住民からの意見が多かったため、安全性や同書内にも記載した実測値の正確性をアピールし、沿線の不安を払拭しようと試みた。
沿線都県市の担当者を迎え、駅のホームやリニアの車内の他、延長42・8キロ各所の高架橋下、トンネル上部などで測定を行った。
このうち、ホーム上の実験では、停車時に発生する静磁界と走行時の変動磁界を観測する機器、国際ガイドライン(ICNIRP)に対する適合率を表示する機器を用い、車両から6メートル、9メートルの距離で磁界の強さを示す磁束密度を測定。停車時、時速30キロ走行、同500キロ走行の3ケースを想定し、それぞれの実測値を示した。
時速による大きな変動はなく、6メートルの距離ではおよそ0・19ミリテスラ、9メートルで0・06ミリテスラを観測。国際ガイドラインに対する適合率は6メートルの距離で4分の1程度にとどまった。
同社は、世界保健機関(WHO)が「健康への影響はない」としている国際ガイドライン以下であること、厚生労働省のペースメーカー等承認基準の1ミリテスラを大きく下回っていることを強調。リニア開発本部担当部長は「沿線の環境はさらに距離が離れているため、健康への影響はまったくない」とした。
中央新幹線の磁界について同社は、国際ガイドラインの遵守を掲げるとともに、「車両、ホーム等、通常、人が立ち入る空間について、静磁界1ミリテスラを守るよう、施設および車両の設計をする」としている。
終了後の会見で、同部の環境保全統括部長は「磁界はリニアの特徴から来るもので、漠然とした不安を持つ住民に安心していただく意味で公開した」と強調。騒音や振動などについては「(測定を)公開することは考えていない」とした。