県は4日、リニア中央新幹線の整備効果を地域振興につなげるための指針「県リニア活用基本構想」の素案をまとめ、県庁で開いた2回目の伊那谷自治体会議で示した。飯田下伊那と上伊那地域の「伊那谷」、諏訪・木曽・松本地域と近隣地の「リニア3駅活用」、県全域の「本州中央部広域」の3交流圏を設定し、構想を明記。伊那谷交流圏は「グローバルな知の集積と交流拠点」「原風景や文化・国際交流を体験できるフィールド」など3点をめざす姿とした。
飯田、伊那、駒ケ根市長と南信州・上伊那両広域連合長の代表、県現地機関の所長らでつくる「リニア中央新幹線整備を地域振興に活かす伊那谷自治体会議」で示した。
構想は▽既存の地域資源を活かした魅力創出▽交流人口の拡大による活性化▽日本の将来への貢献―を目指すもので、「3つの交流圏を重層的に構築することでリニア効果を最大限に発揮できる」としている。
伊那谷交流圏は、南信州広域連合がリニア将来ビジョンで挙げた「小さな世界都市」や「高機能付加価値都市圏」などを基礎とし、「グローバルな“知”の集積と交流の拠点」「豊かさを実感できる新たな暮らし方の実践の場」「美しい信州の原風景や文化・国際交流を体験できる感動のフィールド」の3つを目指す姿として掲げた。
実現に向けたアプローチは地域振興と基盤整理の2項目に分け、地域振興は▽産業振興▽暮らしの魅力向上▽広域観光の推進―の3つの視点で方針を示した。
このうち「産業」には、学術・研究機関の集積、航空宇宙産業や健康長寿など次世代産業の創出やアグリビジネスの推進、森林資源の活用など、「暮らし」には多様なライフスタイル実現など、「観光」はリニア駅を拠点とする観光ルートづくりや南アルプスを鍵とする山岳高原観光地づくりなどを盛り込んだ。
ほか、3駅活用交流圏は長野、岐阜、山梨の3駅活用を視野に「流動回路の多様化を活かした交流拡大と地域活性化」を、本州中央部広域交流圏は人の流動創出に向けて「東日本と西日本、太平洋と日本海を結ぶネットワークを活用した交流圏の構築」を目標とした。
会議で阿部守一知事は、リニア担当部長やリニア地域振興本部の設置構想を明かし、「構想をどう具現化するかが我々の責務。どちらが負担するという話ではなく、市町村と組織的に連携し、目標を共有して進めたい」とし、地域づくりや土地利用計画などについても考え方を共有したい考えを示した。
構想の目標年は2027年。県民の意見を聞き年度末までにまとめる。来年度には改定し、駅や駅周辺整備、交通ネットワークの具体的方針を盛り込む計画だ。