リニア中央新幹線計画のJR東海の環境影響評価(環境アセス)方法書について、県環境部は13日、飯田下伊那の7市町村を含む県内ルート沿線自治体とのヒアリング会議を飯田市追手町の県飯田合同庁舎で開いた。自治体担当者からは、水資源の保全や磁界の影響など、自然・生活環境への配慮を求める意見が相次いだほか、事業を通じての積極的な情報開示や地元との十分な協議を望む意見が目立った。県に対しても連絡、調整窓口としての機能の発揮を望む声が上がった。
2月末までにJR東海に提出する知事意見に地元市町村の要望を的確に反映させようと企画。JR東海が示した県内ルート(3キロ幅))沿線に該当する飯田、松川、高森、大鹿、豊丘、喬木、阿智の7市町村と南木曽町の担当者らが意見を述べた。8市町村は同日までに、県側の照会に応じた地元意見を文書でも提出した。
水資源の保全に関する意見のうち、喬木村と豊丘村は、ルートの想定区域内にある村営水道の深井戸を示し、水質や水位への影響を懸念。喬木村は天竜川周辺の河川工事でも水源に影響を受けたことを伝え「トンネル工事だけでなく、橋梁橋脚の工事も調査項目に含めてほしい」と求めた。
飯田市は水源域回避を求め、水量や水質調査については「三遠南信自動車道関連の県の直近の調査も参考にして、同等、いやそれ以上に念入りに願う」と要望。複数の自治体から、環境アセス後も継続的な調査の必要性を強調する声が上がった。
昼神温泉がある阿智村も「予測が難しくても温泉源に影響が出れば取り返しがつかない。(ルートは)清内路峠断層を横断する予定で、温泉の枯渇などへの懸念が解消されない」として、温泉を含めた水資源関係のきめ細かな調査を求めた。
磁界や騒音などへの住民不安を代弁する自治体も目立った。高森町は「山梨実験線の磁界の測定結果や周辺住民の健康状態に関するデータを開示すべき。難解、複雑のままとせず、身近な事象を引用するなどして住民に分かりやすい説明を」と発言。大鹿村は「山間地は一定の基準だけでは影響が計れず、現状との比較が重要」と提言した。
このほか「トンネル掘削などに伴う発生土の処分や利用の方法について、事業者の方針を明確に」(飯田市)、「掘削土の搬出経路や処理方法はアセス期間中に地元市町村と十分な協議を」(豊丘村)など、残土処理関連の意見も相次いだ。
大鹿村は「残土運搬のためのダンプカーが往来し、住民生活に長期に多大な影響を及ぼすことが予想される」と指摘し、アセス段階で工事用道路の予定や工事車両の予測を示し、住民理解を求めるよう要望。県に対して「国などとも重要な窓口となる。早め早めの情報共有に向け、連絡会議なりを開いてほしい」と求めた。関連して南木曽町は「残土搬出は連帯的対応が伴う。県や市町村間の意見交換の場がほしい」と県に促した。
リニアをめぐっては、JR東海が昨年9月に自然環境への影響を調査するための「方法書」を公開。県が専門家などを交えた環境影響評価技術委員会で内容を審議している。
県環境部環境政策課の寺澤信行課長は「技術委員会でも『基準クリア型ではなくベスト追求型を』の意見が出ている。今日は各市町村から地元に密着した内容の意見を聞けた。技術委の意見も踏まえ、なるべく網羅する形で知事意見をまとめたい」と話した。
18日に県庁で開く同技術委では今回のヒアリング内容も提示する形で、委員会としての意見を集約。知事は同技術委や市町村の意見を勘案し、住民の意見にも配慮した意見書を作成し、2月28日までにJR東海に提出する。