東京―大阪間を結ぶリニア中央新幹線計画で、大畠章宏国土交通大臣は26日、南アルプスを貫く南アルート(Cルート)を経路とする整備計画を決定し、27日にJR東海に建設を指示した。南アルートが正式決定したことで、飯田下伊那地域への中間駅設置が固まり、焦点はリニア飯田駅の位置決定をめぐるJR東海と沿線自治体の協議に移った。
整備計画は1973年に決定された基本計画より踏み込んだ計画。JR東海の構想を認める形で区間を東京―大阪間、走行方式を超電導リニア、最高設計速度を時速505キロ、建設費を9兆300億円、主要な経過地を甲府市付近、南アルプス中南部、名古屋市付近、奈良市付近と定めている。
全国新幹線鉄道整備法に基づき、JR東海との協議を経て国交相が決定。27日に建設・営業主体に指名したJR東海に建設を指示した。
大畠国交相は会見で「東日本大震災への対応に全力を挙げるべきだという意見もあるが、日本の未来に対する展望を示す事業としてリニア中央新幹線を一歩前に進める」と話した。
経路が東京―名古屋を直線的に結ぶ南アルートに決定したため、県内駅は飯田下伊那地域に置かれることが確定した。
計画決定と建設指示を受け、JR東海は環境影響評価(環境アセスメント)の手続きを開始。12月中の着手に向け、近く現行の20キロ幅を3キロ幅までに絞る具体的なルート設定や中間駅の位置などについて考えを提示し、県との本格的な調整に入る。
リニア飯田駅の位置をめぐっては、飯伊が飯田市の中心市街地にある現飯田駅への併設を求めているのに対し、JR東海は同市北郊外への設置を想定。協議の本格化を前に、飯田市は風越山や野底山など水源地一帯の保護を理由に挙げて、北郊外への駅設置をけん制している。
協議の窓口となる県は飯伊のほか、諏訪や上伊那など中南信地域の意見をまとめた上で基本的な考え方を示す方針だが、阿部守一知事はこれまで飯田駅併設の是非について見解を明らかにしていない。
リニア中央新幹線は、東京―大阪を結ぶ東海道新幹線のバイパスとしてJR東海が計画する新たな高速鉄道。同社は東京―名古屋間の2027年先行開業を目指している。
南アルートは東京―名古屋をほぼ直線で結ぶルートで、長さは286キロ。同社の試算によると、所要時間は直通タイプで40分、各県の中間駅に停車する各駅停車は72分。工事費は5兆4300億円で、輸送需要量は年間167億人キロを見込んでいる。
同社が想定する飯田エリアの中間駅の乗降人数は1日7000人。飯田からは東京までを45分程度、名古屋までを25分程度で結ぶと見られている。