JR東海は21日、山梨リニア実験線(山梨県都留市―大月市)の先行区間(18・4キロ)では最後となる走行試験を報道陣に公開した。台風15号に伴う暴風雨の中、時速500キロでの走行を重ねた。2013年末の完成を目指す42・8キロへの延伸工事完了後、営業を想定した12両編成で再開する。
実用化仕様に向けた走行試験が概ね完了しているため、10月から2年半にわたって中断し、延伸工事に専念する。
遠藤泰和・実験センター所長は「14年間にわたる試験で目標以上の実験成果を得られた」と胸を張り、「再開後は営業仕様の設備で技術のブラッシュアップ、コスト低減を図り、営業線につなげていきたい」と決意を語った。
この日は営業線の予定速度となる時速500キロで20往復。台風15号の接近で豪雨、強風に見舞われる時間帯もあったが、試験車両は影響を受けることなく疾走を続け、ラストランを飾った。
走行試験は高速性、輸送力・定時性、経済性の確保を目指し、1997年4月にスタート。これまでの走行距離は累計87・4万キロに達し、最高時速581キロでの走行や1日当たり2876キロの走行などを実現。2009年には国土交通省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会から「営業線に必要となる技術が網羅的、体系的に整備された」と評価された。
同年後は従来のガスタービン発電装置に変わる新たな車内電源確保策として、電磁誘導の作用を利用して路線部のコイルから車内に電気を集める誘導集電についても研究。技術評価委から「実用な技術が確立している」との評価を得られたため、「採用することを前提に環境影響評価の手続きを進める」とした。
2013年末の完成を目指している新実験線は、先行区間を含む笛吹市―上野原市の42・8キロ。完了後は営業線を見据えて開発している新型車両L0(エルゼロ)系を投入し、再開。12両の長大編成で開業に向けた最終確認を行う。
実験線は中央新幹線の本線としても活用する計画で、東京―名古屋間(286キロ)の7分の1を占める。