リニア中央新幹線のルート選定問題をめぐり、県市長会(会長=小坂樫男伊那市長)は27日、大町市で開いた総会で伊那や諏訪など9市が共同提出した、県などに伊那谷迂回のBルートによる早期実現を求める議題の採択を見送り、正副会長らに扱いを一任した。9市が「Bルートの意思統一を確認し、県全体の振興を考えて心を一つにしたい」と訴えたものの、飯田市の牧野光朗市長が時期尚早だとして猶予するよう求め、意見が分かれた。正副会長は村井仁知事に経過を報告し、合意形成を図るよう求める。
議題は松本、大町、塩尻、安曇野、岡谷、諏訪、茅野、駒ケ根、伊那の9市が、副市長・総務担当部長会議の送付議題として共同提出。「県内通過ルートは、リニア中央エクスプレス建設促進長野県協議会でも諏訪、上伊那、下伊那を通る『Bルート』と決定されており、Bルートによる早期実現を関係機関に更に強く求める」とした。
総会では、諏訪市の山田勝文市長が「Bルートは長い年月をかけて決まったもの。もう一度心を一つに意思統一を図り、リニアを中心とする交通網整備で将来の県の発展につなげてほしい」と提案理由を説明。中央道の迂回が県内の振興につながっているとし、地方行政を考える上ではBルートを求めるべきだと強調した。
これに対し、飯田市の牧野光朗市長は「JR東海と県が真しに議論している段階であり、後に憂いが残らないようにすることが必要。まだまだ山あり谷ありの動きが予想されるため、今回の提案の採択は猶予してほしい」と保留を求めた。
意見の中で牧野市長は、飯田駅の設置に向けて30年にわたって運動を展開してきた地元の状況を「(直線の)Cルートを支持する動きが大きな力になり、熱を帯びてきている」と説明。そのうえで「地域の状況はあるが、市長としては県内の地域振興に生かすことが必要だと認識し、ルートに関する言及を避けている」との立場を強調し、理解を求めた。
牧野市長の発言を受け、伊那市長の小坂会長は「時期尚早どころか遅いぐらいだ」と反論し、「駅は別問題とし、今ここできちんと長野県の態度を示すべきだ」と主張。茅野市の柳平千代一市長、岡谷市の今井竜五市長、駒ケ根市の杉本幸治市長らも「県全体の発展を考えるべき」(岡谷市長)などと同調し、採択の必要性を訴えた。
一方で、小諸市の芦澤勤市長が「現在は全市の共通認識が必要な段階で、もう少し情報収集をするべきだ」、飯山市の石田正人市長が「駅の設置を含めて運動するべき」と指摘。意見が分かれてまとまらず、総会は採択を見送り、扱いを正副会長に一任することを決めた。
終了後、牧野飯田市長は「民間が採算性を求めるのも、地域が振興を願うのも当然。現在は両者が協議をしている段階であり、推移を見守ることが大切だ。主張は理解していただけたものと思っている」と話した。
会長の小坂伊那市長は「議題の趣旨は生かされた。できるだけ早く知事に伝え、県としての合意形成をお願いしたい」と語った。