リニア中央新幹線の建設計画を巡り、JR東海と県、関係市町村長の意見交換会が14日、飯田市追手町の南信州飯田消費生活センターで開かれた。同社の宇野護副社長は、南アルプストンネル静岡工区(8・9キロ)が未着工となっている問題に触れ、「(東京―名古屋間の)2027年の開業は難しい」との認識を改めて示した一方、「延期期間は極力短くしたい」と述べ、県内工事については「ペースを緩めることなく進める」と強調した。
意見交換会はことし1月以来で6回目。飯田下伊那14市町村と上伊那郡中川村、木曽郡南木曽町の首長らが出席した。
冒頭以外は非公開。あいさつで宇野副社長は、静岡工区について「工事ヤードの整備からトンネル掘削、ガイドウェイの設置、試運転には計7年8カ月かかる見込み」としたうえで「今年6月に着工できなかったことから27年開業は難しい」と説明し、理解を求めた。具体的な開業時期については明言を避けた。
総延長約53キロの県内工事の進捗(しんちょく)状況は「長野県駅やトンネル工事など一部を除き、(延長ベースで)約8割の工事の契約を済ませた」と報告。天竜川橋梁と高架橋の新設工事(約960メートル)は、来年1月から河川内で準備工事を始めるとした。
県とJRによると、首長からは、残土置き場や残土運搬ルートの早期確定、工事車両通行に関する地元との協定を順守するよう求める声が多数上がった。地元住民への情報提供については「迅速に行ってほしい」との要望があった。
残土処分について宇野副社長は「飯田市や大鹿、豊丘、喬木村、伊那市の計11カ所で残土の受け入れが確定しており、30カ所の候補地で関係者と協議を進めている」と明らかにした。全て確定すれば県内工事で発生する残土約974万立方メートルのうち、約9割の処分地が確保できるとの見通しを示した。
関係市町村を代表し、冒頭であいさつした飯田市の佐藤健市長は「リニアの建設で周辺の生活環境が大きく変化する住民がいる。関係者の理解の上に事業が成り立っていることをJRにも受け止めてもらえれば」と求めた。
終了後、佐藤市長は静岡工区について具体的な数字が示されたことに触れ、「目安として市民や事業者に説明できるようになったのは1つ進展だと思う」と話した。阿智村の熊谷秀樹村長は「リニア開業に合わせた村づくりを行っている。静岡工区の住民の安心安全を担保しつつ迅速に事業を進めて」と注文をつけた。
◎写真説明:関係市町村の首長との意見交換会であいさつするJR東海の宇野副社長