リニア飯田駅設置推進協議会と飯田商工会議所リニア特別委員会、南信州新聞社は26日、飯田市吾妻町の市公民館で「夢のリニア中央新幹線セミナー」の第3弾を開いた。市民ら300人余が集い、講演やシンポジウムを通じて直線の南アルプスルートの優位性を確認するとともに、リニア飯田駅を見据えたまちづくりを探った。
第3弾の今回も、講演とシンポジウムの2部構成で行い、第1部は土木系のウェブサイト「日経BP社ケンプラッツ」の高槻長尚・副編集長が「南アルプスを超えるリニア中央新幹線」のテーマで講演した。
JR東海が示した工事費や維持費などの試算について専門的見地から分析を加え、南アルートの優位性を強調。「客観的に見て、伊那谷ルート(B案)で通すことは難しく、直線の南アルートになる可能性が高い」と指摘した。
独自に予測した路線図や時刻表も紹介。飯田下伊那の経路について「伊那谷の横断は予想以上に勾配が大きいため、選択肢は少なく、自ずと決まってくる」との見通しを伝えるとともに、「品川―飯田間の所要時間は40分程度になるだろう」と語った。
第2部のシンポジウムでは、市民募金を集めて東海道新幹線の駅誘致に成功した静岡県掛川市の仁科雅夫・掛川商工会議所会頭から先進事例を学び、民主党の加藤学衆院議員や同協議会の関係者らがパネリストになって「飯田駅を見据えたまちづくり」をテーマに意見交換した。
仁科さんは、市民や企業を巻き込んだ積極的な募金活動を通じて約30億円を集め、新幹線駅の設置に成功した事例を報告した。
高速道路とのネットワーク効果などで予想以上に経済活動が盛んになったとし、「3000億円未満だった製造品出荷額が1兆円近くまで増えた」と駅誘致の効果を解説。住民意識を高揚させるノウハウや考え方も伝えた。
加藤衆院議員は、リニア飯田駅を伊那谷、県全体の駅としてとらえるべきだと指摘。「飯田駅に結びつけるさまざまな交通ネットワークの整備も含め、大きな視点から考える必要がある」と語った。
北沢俊美党県連会長が主張している「伊那谷ルートによる県内2駅設置」について、参加者から真意を尋ねられると「我々民主党の決定ではない。私見だと受け止めている」と説明。「財政難のなかで国の支出を増やしてまでやるべきことかという見方があり、一日も早く、効率よくやろうという声が全国に広がっている」とする一方、「長野県との関係はこれまでの経緯があるので、慎重に事を運ばなければと考えている」と話した。
ほか、同会の宮島八束会長や飯田商工会議所の柴田忠昭副会頭が、駅実現を見据えた地域作りの必要性を強調。同会議所の城田美津子女性会長は、子どもたちに夢を語ることで、若者を巻き込んだ議論が発展することに期待を寄せた。
参加者やリニア沿線となる岐阜県中津川市や三重県亀山市の経済団体関係者らが意見交換の輪に加わり、それぞれの取り組みやリニアに対する期待を語り合った。