入山者が排せつ物を含めた全てのごみを持ち帰る「エコ登山」構想を描き、具体化に向けた取り組みを進める飯田市の遠山郷と呼ばれる南信濃木沢地区で10日、登山家の大蔵喜福さんとアルピニストの野口健さん、佐藤健市長が対談した。旧木沢小学校で膝を突き合わせ、南アのエコ登山プロジェクトを世界の潮流から考える機会にした。
テーマは「南信州遠山郷発 世界ブランドのエコ登山を目指して~アルピニスト野口健さんと語る『世界から見たこれからの登山』~」。野口さんは富士山で20年近く取り組んだ清掃活動に触れ「地元の人たちが周りの自然をどれだけ知っているかが鍵」と指摘。それには学校登山が大事といい、「近くの自然に興味を持つ。この地域でも地元の子どもたちが山に登り、体験を通じて自然に対する愛着が湧いてくると好循環が生まれる」とみた。
大蔵さんが顧問を務める「南信州山岳文化伝統の会」は南アルプスの中で手付かずに残る遠山郷の山域に着目し、エコ登山を推進している。野口さんは「山はあえて行くところ」とも。山小屋に風呂を求め、自動販売機もある富士山を例に「サービスを提供するのはおかしい。自然と人との関係性が間違った方向に行っている。大蔵さんの取り組みはまさに原点に戻ること」と理解を示した。
また野口さんは「取り組みの推進には民間と行政がいかに連携するか」と指摘。佐藤市長は「遠山郷は飯田の宝であり、地域の子どもたちに自然や文化について学べる場をつくるのが我々の役目」と前向きに受け止めた。
大蔵さんはこれまでの経験を踏まえ「自然から学ぶものが多い」と語り、「各地から登山ガイドを集めて世界の遠山郷にしたい」と先を見据えた。
インターネットを活用するオンラインセミナー「NAGANO観光アカデミー」の一環で、県観光機構(長野市)が主催。対談の様子は動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信した。
◎写真説明:対談する野口さん(中央)ら