飯田市箕瀬町の大場君江さん(85)は30年にわたりはんてんを作り、高齢者に贈り続けている。感謝の言葉や笑顔が生きがいにつながっている。
友人の夫が脳梗塞になり「ジャンパーに手が入らない」と悲しんでいることを知り、はんてんを作ったところ喜んでくれた。これがきっかけで高齢者施設に贈るようになり、市社会福祉協議会を通じて毎年約30着を届けている。
布はもらった古い着物を使用し、中に綿を入れている。1着仕上げるのに1週間かかるという。体格を考慮し、サイズを変えている。
袖ありの他、袖なしも作る。車いすを動かす際や食事、パソコン使用の際に邪魔にならないと好評だ。体にフィットするよう肩の部分を斜めに下げた形にし、動きやすいように襠(まち)を付けている。
絹を引き伸ばして作った真綿も入れているため、綿が切れず丈夫なのが特長だ。真綿は群馬県の富岡製糸場付近に住む人が送ったもの。宅配物を包む新聞紙に大場さんの記事を見つけ、近所から真綿を集めてくれたという。
阪神淡路大震災や東日本大震災が発生した際には、約20着を被災地へ。昨年の台風19号被害でも「少しでも助けになれば」と25着作り、長野市に送った。
利用者から送られたたくさんの礼状に「文や写真を見て、こんなに喜んでもらえるなんてとうれしくなり、こちらが元気をもらっている」。
6年前に他界した夫の正志さんが、着物のアイロンがけなどを手伝ってくれていた。最近は腰が痛いが、友人3人が綿入れを助けてくれている。「多くの人の支えのおかげでできている」と感謝。「少しでも人の役に立てればと始めたけれど、今は生きがいになっている。これからも作り続けたい」と笑顔で話した。
◎写真説明:大場さん