新型コロナウイルスの終息が見通せない中、修学旅行や代替行事の行き先に阿智村を選ぶ県内の学校が増加している。昼神温泉郷の旅館に宿泊し、星空を楽しんで満蒙開拓平和記念館で平和学習―といった旅程が人気を集めており、村は学校への営業を強化するとともに、修学旅行以外の誘客にもつなげたい考えだ。
浪合地区の星空観賞施設「日本一の星空 浪合パーク」は6月以降、学校からの利用申し込みが増加。既に実施した学校も含め、50校以上の予約が入り、その多くが県内の学校という。
12日は中野市の高社小学校の6年生72人が訪れ、村が日本一を掲げる星空を堪能した。
同校は当初、1泊2日の日程で東京都を訪問する計画を立てていたが、コロナの影響で県内旅行に切り替えた。初日は松本や飯田市で観光を楽しみ昼神温泉に宿泊。夕食後に星空観察に繰り出した。
この日は夜空に雲ひとつない絶好の観賞日和。芝生の広場にレジャーシートを敷いて寝転がった児童たちは満天の星空を見上げ、星座を探したりして思い思いに楽しんだ。男子児童(12)は「村の名前は少し聞いたことがあったけど来たのは初めて。中野よりもずっと星がきれいに見えた」と笑顔。引率した山﨑吉治校長は「同じ県内でも北信に住んでいると南信に行く機会はほとんどない。子どもたちが信州の魅力を再発見する旅行になっている」と話した。
夜間の催しとあってか、星空観賞をする学校の多くが近くの昼神温泉郷の旅館に宿泊している。「ユルイの宿恵山」(田中尚夫社長)では例年、関西圏から5校程度の受け入れにとどまっていたのが、今年は既に15校の修学旅行を受け入れており、11月までにさらに5校の予約が入っている他、現在も複数の学校から問い合わせが来ている。
その多くが県内の小学校といい、田中社長は「小学生の修学旅行の受け入れの経験はこれまでほとんどなかったので、児童の舌に合うような食事を考えるなど試行錯誤している」と語った。
中学校の修学旅行では平和学習の一環として満蒙開拓平和記念館に足を運ぶ学校も多い。
同館によると、3月以降コロナの影響で団体予約のキャンセルが相次ぎ、5月まで休館。6月以降も来館数は昨年同期比で半分程度と低調だったが、10月に入り急増。予約分も含めて26校、11月も既に18校の予約が入っている。
特に県内の学校の訪問が多く、昨年の3倍近くまで増加。寺沢秀文館長は「これまで飯伊以外の県内の学校の来館は少なかった。全国で最も多くの開拓団を送り出した歴史を鑑みれば、こういう学習の機会を持ってもらうことは大変有意義」と歓迎する。
昨年完成した120人を収容できるセミナールームがコロナ対策を取りながらの学習を可能にしているといい、「思い切って昨年建てておいてよかった」と寺沢館長。「今回の来館者の急増を一過性のものにならないよう努めたい」と意気込んでいる。
熊谷秀樹村長は「以前から修学旅行の誘客に取り組んでいたため、早い段階からさまざまな学校に打診をしていたが、じっくりと村に滞在してもらえるのはうれしい」とし、「修学旅行以外でも村を訪れてもらえるよう関係作りをしたい。飯伊の児童生徒には地域資源の大切さを学ぶ機会になれば」と話していた。
◎写真説明:星空を観賞する中野市の児童