武田信玄が情報伝達の手段として狼煙(のろし)の広範なルートを構築したとされる南信の関係地域で作る「武田信玄狼煙会」は8月29日、恒例の狼煙リレーを行った。13回目を迎える今回は新型コロナウイルスの影響で規模を縮小。根羽村から辰野町までをつないだ。
北上する経路で午前10時から、根羽村、平谷村、泰阜村、阿智村、下條村、飯田市(上久堅、三穂、山本、龍江)、喬木村、豊丘村、高森町、松川町、中川村、伊那市、箕輪町、辰野町の14市町村、32カ所で順に煙を上げた。
例年は各地点でイベントを企画しているが、今年は関係者のみで狼煙を上げた地域が多かった。
できる範囲内で例年通りのイベントを企画したのは神之峰(飯田市上久堅)、兎城跡(同市龍江)、吉田城山・吉田古城(高森町)の3地区。うち第1回から参加している神之峰では、武者姿の小学生が点火をした。
参加者たちは、午前10時10分ごろに下條村の極楽峠パノラマパークなど数地点で狼煙が上がったのを確認。重さ約5キロのよろいを着た上久堅小学校6年生の児童2人がたいまつで点火した。
竹と杉の葉で作った高さ2メートルほどのやぐらが勢いよく燃え上がると、集まった約20人の住民から歓声が上がった。
児童らは「怖かったけどめったにできないことだから体験できて良かった」、「よろいは初めて着たが暑い。ちゃんとやぐらが燃えたので安心した」と話した。
上久堅公民館の長沼成館長(68)は「今年は他の地域も真っすぐ上がったようで何より」と話した。
武田信玄は根羽村の杣路峠から甲府までの間に狼煙台を数多く配置し、山河の情報を伝達していたとされ、狼煙台のあった飯伊二十数カ所は強く結びついていたという。
◎写真説明:やぐらに点火する児童ら