県最南端の天龍村中井侍地区で1日、一番茶摘みが始まった。天竜川を望む急斜面に貼りつくように広がる茶畑で、生産者や集まった親族らは、すくすくと伸びた生葉を丁寧に摘み取っていった。
標高約290~400メートルほどに茶畑が広がる同地区は、霧や日差しをしっかり浴びて育つことから、県内で最も早く茶摘みが始まる産地として知られる。
標高約400メートルの茶畑約10アールで茶を育てる柿下忠雄さん(73)方では、親戚や手伝いを頼んだ地区住民、村の地域おこし協力隊ら14人が参加して、午前8時ごろから作業を開始。一人一人が腰にかごを結び、先端から3枚の葉を摘み取る「一芯(しん)三葉」の方法で次々と摘み取っていった。
昨年よりも10日ほど早い収穫となった。柿下さん方では例年約400キロの生葉を収穫するが、霜の影響を受けて収穫量は少し減る見込みという。「高齢化で生産量を減らす生産者もおり、担い手不足は課題。協力隊などの若い力が助けになる」と話した。
この日、複数の農家で茶摘みが始まった同地区。収穫した茶葉は近くの工場で製茶し、地域の独自銘柄「中井侍銘茶」として自家販売する。
中井侍地区の茶生産は、1973年に産地化を目指して本格化。多くの農家が在来種からやぶきたに品種を変え、生産振興を図っている。親戚や友人が各地から駆けつけ、助け合うのが慣例で、現在も17軒が生産している。