飯田市下久堅虎岩嵯峨坂の自生地でザゼンソウ(座禅草)が見頃を迎えており、連日見物客が訪れている。8日には「虎岩の文化財を保護する会」(池田健一会長)が現地で見学会を開いた。
飯田下伊那地域では数少ない自生地を「多くの人に知ってもらいたい」と願い、2017年から毎年この時期に見学会を開いている。今年も守る会のメンバーらが案内役を務め、ザゼンソウの生態や整備をする上での苦労などを紹介した。
この日は朝から雨が降り続く中、地元住民や写真愛好家らが来場。遊歩道沿いに顔を出した濃い赤紫色のザゼンソウや周囲の自然を観察したり、写真に収めたりしていた。
同市松尾毛賀の小学校教諭、村松亮彦さん(56)さんは「下久堅の自生地には初めて来たが、これだけ多くのザゼンソウが生えているのを見たことはなかった」と話していた。
ザゼンソウはサトイモ科の多年草で、花のように見える赤紫色の仏炎苞(ぶつえんほう)に包まれた姿が、僧侶が座禅を組む姿に似ていることからこう呼ばれている。雪解けを待つ他の植物との競争を避けるため、約20度ほどに発熱して周囲の雪をとかし、芽を出すという。
同会によると、嵯峨坂では暖冬の影響もあり、昨年より10日早く先月11日に開花。3月末ごろまでが見頃という。池田会長は「嵯峨坂にはザゼンソウのほかにもさまざまな植物が自生している。いつでも足を運んでもらえれば」と話していた。
嵯峨坂の自生地は標高634メートル。500株以上が自生しているとして、1995年に市の天然記念物に指定された。同会は2015年から駐車場や遊歩道の整備などに取り組んでいる。
◎写真説明:ザゼンソウをカメラに収める見学者