飯田市景観条例の特別規制地区の指定を受け、美しい田園風景を守ろうと取り組む川路まちづくり委員会(長谷部喜則会長)は2月末までに、基準を満たさない屋外広告物の撤去をほぼ達成した。地区内の基準を超えるような大きな看板を縮小し、自己の敷地以外に設置した看板も除去。今後開発が進んでも里山や田園風景が守られる環境を実現した。
同地区は2007年、土地利用計画を検討する中で、天龍峡ICや川路バイパスの開通、天龍峡再生などにより土地の開発や看板などの乱立が予想されたことから、景観規制を設けて田園風景の残る美しい地域景観を維持しようと計画。
拘束力のない住民協定ではなく、地域ごとに基準や有効期限などを定められる「市景観条例屋外広告物特別規制地区」として08年10月1日に指定を受けた。屋外広告物へ面積や高さ、色彩などを設定し、自己の敷地内のみ設置可能という厳しい基準を設けた。原則として同年から5年以内に基準外の広告物撤去、ただし可能な限り短期間の2年で実施する方針を決めた。
実際の撤去作業は09年から森下隆地域振興委員長が中心となりまちづくり委員会役員、各区長でつくる撤去推進委員会が実施。地区内の看板320件余を再調査し、うち88件が基準を満たさないことが判明。「人様の財産を撤去することになる」と委員が1件ずつ看板主・地主の協力を求めて足を運んだ。
商売において看板は欠かせない存在。時には厳しい批判を受けることも。幹線道路から離れた事業所・店舗では道標の案内看板は欠かせないため、例外として案内板1つを認めた。また、撤去した看板の代替として集合看板も設けた。
これにより、ことし2月末までに計86件の看板撤去を達成。特殊な事情により撤去されなかった残り2件と今回対象としていなかった電柱看板も5年以内には撤去される見通し。新たな看板設置には市と地元の許可が必要なため、今後とも現在の景観が維持できることになった。
「初めはこんな事業は不可能だと言われたが、各区長が熱心に足を運び、看板主の理解を得られて実現できた」と森下地域振興委員長。「高い看板を4メートルまで低くしてもらったところ『かえって目にとまるようになった』と喜んでくれる方もいた」と地域の理解と協力に感謝する。
川路地区で厳しい景観規制を実施した背景には、来るべきリニア時代を見据え「町と田園、里山が混在する飯田市らしい風景を残したいという強い願いがある」と川路まちづくり委員会の長谷部会長は語る。
川路地区は今後「歴史文化と川路を思う心豊かな人づくり」に取り組む方針。11年度は三六災・市合併50周年の節目を記念し歴史を振り返る事業を実施するほか、地域に残る碑文、天龍峡、里山などを活用した学習活動を展開する計画だ。関島雅直副会長は「景観づくりはその第一歩」と今後のまちづくりへ期待を膨らませていた。