「市田柿」にちなんだ南信州の伝統行事を継承し、さらなるブランド化や生産・販売振興につなげようと、飯田市農業振興センターと市は20日、果実の豊作を願う小正月の伝統行事「成り木責め」を同市上郷黒田の柿畑で実施した。同センターによる剪定(せんてい)講習会の参加者約40人が見守る中、職員2人が儀式に臨み、今年の豊作を祈った。
儀式は1人が「成りそか、切りそか。成らぬと、すっぱり切っちまうぞ」と唱えながらナタで幹に傷を付けると、もう1人が「成ります、成ります。鈴なりに」と木の心情を代弁。傷口に、かゆと日本酒を供え、秋の実りに期待を込めた。
市農業課によると、成り木責めは戦前までは飯伊の各地で普通に行われていたが、近年はほとんど見られないという。作法は現在も伝統を継承している同市下久堅の「三石家」にならった。
市田柿は昨年、国が地域の農林水産物や食品をブランドとして保護する「地理的表示保護制度(GI)」に登録されている。同センターの澤柳実也副事務局長は「地域で大切に育まれてきた市田柿。GI取得も契機に、成り木責めなどの風習とともに、さらに広めていければ」と話していた。