国立研究開発法人土木研究所は15日、貯水池にたまった土砂を低コストで排出する新技術の公開実験を、松川町の片桐ダム付近で行った。企業関係者や報道など約30人が参加し、配管を通って水と土砂が流れ出ていく様子を確認した。
ダムの課題は、川の水とともに土砂が流入し、貯水機能が低下すること。重機による掘削やポンプでの吸い上げ、排砂設備の導入などの対策があるものの、コストや労力が問題になっている。
同研究所のつくば中央研究所水工研究グループ水理チームは、水位差エネルギーのみを利用し、動力を使わない排砂装置を研究開発した。「低コスト」「操作が簡単」「排砂時に水位を下げる必要がない」などをメリットに挙げている。
ダム内に堆積した土砂の上に吸引部を置き、配管を通して水とともに砂を下流に排出する仕組み。1日に820立方メートルの土砂を下流に流せるという。
室内実験や水位差1・6メートルのダムでの現地実験を経て、今回は片桐ダム上流にある水位差12メートルの砂防えん堤で実験。ほぼ設計通りの性能を確認した。
吸引口の大きさに限界があり、直径15センチ以上の流木や石などは流せないなどの課題がある。他の企業と連携し、岩石を砕いたり流木を切断したりする装置を吸引部に取り付ける研究も行っている。
同チームの宮川仁主任研究員は「材料費も設置に必要な労力も低コスト。設置したいと思う管理者がいれば、検討の上で実用に向けた実証実験をしていける」と話していた。
◎写真説明:ダム内の砂を水とともに流す配管