飯田下伊那地域で特産品「市田柿」の収穫・加工作業が始まり、農家の軒先に風物詩の「柿すだれ」がつるされ始めた。JAみなみ信州によると春先の凍害などの影響により、出荷量は昨年の9割になる見込み。3カ月ほど天日干しと柿もみを繰り返し、11月下旬から全国への出荷を始める。
約2トンの市田柿を出荷予定の木下雅司さん(26)=飯田市座光寺=方では30日から収穫を始め、31日から柿むき作業をスタート。機械で次々に皮をむいた柿を専用のひもで結び、柿すだれを作った。
柿は天日干し、柿もみ作業を繰り返すうちに理想的な水分量になり、天竜川の朝霧があたる表面は、白くきれいなブドウ糖の結晶に包まれる。
同JAによると、ことしは3月下旬から4月上旬にかけての凍害、台風による落下、実にひびが入る「条紋」が8―10月の雨の影響で発生したため、全体の出荷量は昨年比1割減、平年比8割減の1400トンほどになるとみている。
収穫のピークは、標高500メートル台の地域が今週末、600メートル台は来週末になりそう。実は小玉傾向にあるものの、糖度は「平年並み」という。
市田柿が全国の店頭に並ぶのは12月から。柿の栽培加工に携わって4年目を迎えた木下さんは「食の安心・安全がいわれるが、十分に配慮し、丹精込めて作っている。多くの人においしく食べてもらえたら」と話していた。
有名な特産品に成長した市田柿は、約600年前から伊那谷に多く見られた在来の渋柿。昭和20年代に干し柿として商品化された。近年はブランド力の向上により、高価格で取り引きされている。