阿南町新野の切子灯ろうづくりが最盛期を迎えている。紙と木を材料に手作業によって作られる伝統の切子灯ろうは、新野の盆踊りや盆行事に欠かせない品だ。
新野で現在伝統の切子灯ろうを作るのは3軒のみ。このうち、金原攸さん(71)方では約30個の灯ろうの制作に追われる。金原さんが切子灯ろう職人となったのは定年退職後、ボケ防止にと挑戦したのがきっかけ。先輩の職人から寸法を教わり、見様見まねで始めた。試行錯誤を重ね、さまざまな道具を自作し、今では毎年多くの注文が寄せられる。
盆に向けての灯ろうづくりは昨年の冬ごろから開始。紙を切って模様を入れ、灯ろうに必要な部品をコツコツと作り続けてきた。根気のいる作業だけに「年間30個が限界」という。
木を組み合わせて型を作り、手すきの特注の和紙を貼り付けて、さまざまな紙の飾りを貼り合わせていく。最盛期の7月下旬には親戚の子どもたちも応援に駆けつけて黙々と作業が続く。新野地区内だけでなく、売木村や天龍村、新野に親類のいる遠方の人からも注文がある。
新盆の家庭には親類から贈られた灯ろうが飾られ、8月16日の午前0時に川原で燃やされる。一つは燃やさずに残され、16日から17日にかけての盆踊りの行事に利用される。
金原さんは現在職人の中で最高齢。「新野では伝統的なものを皆で大切に守っていてくれる。骨のある仕事だが、元気なうちは作り続けていきたい」と話していた。