JAみなみ信州は13日、飯田下伊那地域特産の市田柿の製造過程の一部を省力化するために開発を進めている気熱式減圧乾燥機の説明会を開いた。庫内を減圧して低温で乾燥し、柿の内部から水分を引き出して天日干しの工程を合理化する。高齢化や担い手不足により懸念されている産地力の低下を打破する救世主として期待を寄せている。
国の地域イノベーション創出研究開発事業の支援を受け、信州大学工学部と県農村工業研究所、県農協地域開発機構が開発。「この分野では日本で最大級のサイズ」(同JA)となる第1号機を豊丘村の旧みさと果実選果場に設置し、10月末から3回にわたる実証試験を重ねていた。
皮剥き処理を施した8・4トンを乾燥させたところ、柿すだれにして天日に干す自然乾燥の場合は30日を要する乾燥期間が、5―8日に大幅短縮できる実用的な結果を得た。
その後に粉出しなどの最終処理を行い、既成品と比較。「味、見た目とも同等」で製品として仕上げることができたという。
1号機の処理能力は2・8トンで、乾燥時間を5日とした場合、1基で1カ月間に処理できる量はことしの販売目標1200トンの1・4%。71基あれば同JA管内で出荷されるすべての柿を処理できる計算だ。
JAは今後、乾燥環境の設定などソフト面での調整を重ね、実用化に向けたさらなるブラッシュアップを図る。
付加価値の高い加工品の市田柿は、同JAがもっとも期待を寄せる特産品の一つ。産地拡大に向けて遊休農地への植栽や他品目からの転換、苗代金助成などを通じて作付面積の拡大を図っているが、産地では高齢化や担い手不足が進んでいて、産地をいかに維持するかが課題となっている。
気熱式減圧乾燥機の運用やすでに着手している皮むき事業で生産者の労働量を減らし、高齢化に対応した産地づくりを進めて基盤を維持することがJAの狙い。機械を活用した乾燥で一部を早期出荷して付加価値を得たり、他の果樹にも適用して新製品を開発することなども視野に入れている。
専務理事は「乾燥時間の短縮と品質の安定化という大きな課題をクリアできる機械」と期待を寄せ、「2―3年をかけて品質を上げ、新しいグレードの市田柿をつくり、販売額100億の柿の産地を実現させて農家の所得拡大に反映させたい」と話していた。