新型コロナウイルスの影響が日常生活に顕在化し、飯田下伊那地域でも第4波への懸念が高まっている。誰もが感染する可能性がある一方、誹謗中傷に対する心配の声もある。そんな中で感染してしまった人たちはどのような体験をし、どんな思いで過ごしたのか。1月に感染した飯田市の代田昭久教育長(55)が南信州新聞社の取材に応じた。
―1月12日に発熱し、翌日にPCR検査で陽性が判明。15日に入院することになった。当時の心境は
「年末年始を含め発症の2週間前から夜の飲食店に行くことが一切なく、市外にも出ていない状況の中で感染したという事実を全く受け入れることができなかった。誰かにうつしてしまったかもしれないといった恐怖感もあった」
―入院から退院にかけてどのような症状が出たか
「味覚障害はなかったものの、発症から1週間ほど経つと強いけん怠感に襲われた。これまで味わったことのない症状に怖さも感じた。そんな怖さを払しょくできたのは医療現場の笑顔で寄り添ってくれる対応で、切迫感を和らげることができた。私は10日間の入院だったが、長期にわたって多くの患者に寄り添い、献身的に対応する医療従事者に深く敬意を表したい。保健所の対応も含め、感謝しかない」
―退院から仕事へ復帰するまでに不安はなかったか
「けん怠感がしばらく抜けず、全快までには1カ月間ぐらいかかった。周囲が自分のことをどう思っているか―。退院後の最初の登庁は正直不安があった。この思いは子どもも同じ。心のケアが大事と考え、退院後、校長会を通じて感染や濃厚接触を理由にいじめや差別につながらないよう徹底し、児童生徒の心のケアを伝えた」
―誹謗中傷に悩む感染者もいる
「多くの人から激励のメッセージを受けた一方、一部で根拠のないうわさが出回った。不確かな情報の多さに驚き、悲しくも思った。悪気や誹謗中傷をするつもりがなくても、誰がどこで感染したかなど、不確かな情報を詮索したりうわさしたりすることが人を傷つけることにつながる。大人であれば反論したり説明したりすることができても、子どもはそうはいかない。子どもの立場に寄り添って見守ってほしい」
―市民に向けてメッセージを
「感染者や医療従事者への偏見や差別をなくそうという『シトラスリボンプロジェクト』が盛んに行われているのはうれしく思う。新型コロナによって分断などが起こらず、他者を思いやり、連帯する結の精神を改めて大切にしていきたい」
◎写真説明:インタビューに応じる代田教育長