多額の使途不明金が発覚した下伊那園芸農業協同組合の100%出資子会社「信州下伊那くだもの直販」(小池幸博社長)は8日、使途不明金は9700万円に上ると明らかにした。同社によると、8月に解任された前社長が2009年3月に会社名義の隠し口座を作り売上金などを入金する手口で、不明金の一部を着服したことも認めた。前社長は弁済の意思を示しているというが「状況によっては刑事告訴、告発も視野に入れ適正に判断したい」としている。
取締役の熊谷勝義同園協副組合長(68)によると、昨年10月の県の条例検査で子会社に対する管理体制の整備を指摘されて以降、前社長に対し決算書の開示を求めたところ拒否し続けたことなどから、8月に解任。その後の税務調査で使途不明金が発覚した。9700万円のうち、7000万円については前社長が私的に流用したとみており、現在、架空口座には数千円程度しか残っていないという。
前社長側とはこれまでに2回交渉を行い、前社長の不動産を処理するなどして弁済の意志を示している。ただ前社長が解任と同時に以前の元帳や関係書類を持ち出しており、金額について完全な解明には至っていないとした。
熊谷副組合長は「前社長のワンマン経営で、監査でも見抜くことができなかった。管理上の責任はある」として経営上の甘さも指摘。小池社長(56)は「まさかこれほど多額とは夢にも思わなかった。農家や協力先には大変な迷惑をかけた。関係者に重ねてお詫び申し上げたい」と謝罪。子会社の従業員は4人で、6~8月までの3カ月間で80日間の給料未払いが生じていることも明かし、「前社長がこれまでに弁済したごく一部の金額を充てたい」と話した。