飯田市の牧野光朗市長は11日の同市上下水道事業運営審議会(宮下吉彰会長)に、10月から下水道使用料を月平均8・71%引き上げる改定方針を諮問した。市の下水道整備は2013年度にほぼ終了し、「建設」から「維持」の時代への変換期を迎える。値上げ方針は財源構造の変化に対応し、経営の安定化を図るための「苦渋の決断」(牧野市長)としている。値上げとなると、10年4月(平均改定率7・8%)以来。同審議会は25日の次回会合で意見を出し合う。
市水道環境部によると、月額の基本使用料を現行の1185円から1540円(改定率29・96%)に値上げし、従量使用料も改定する内容。一般的な家庭(月21立方メートル使用)の場合で現行の3493円が3854円と361円(同10・33%)上がるという。公衆浴場用は据え置く。
下水道整備は13年度におおむね終了する一方、元利償還金は16年度にピークを迎え、一般会計を圧迫。「建設の時代」の終わりとともに新規加入時の受益者負担金は見込めなくなるほか、トイレや家電の節水機能の高まりなどで使用水量が減り、合わせて料金収入も減少傾向にある。
市は「財源構造の変化に伴う使用料の適正化は回避できない課題」と位置付ける。これまでは下水道加入促進のため、基本使用量の値上げを抑えてきたが、本来の体系に基づき、使用料で汚水の維持管理や資本費を充当したい考え。合わせて下水道事業を企業会計方式に移行する準備も進める。
一方、同審議会で市側は、下水道と合わせての見直しが一般的な水道料金に関しては、当初見込まれた14年4月の値上げを見送る方針を示した。同年と15年4月の消費増税に伴う料金値上げを優先。浄水場更新の延期など事業のやり繰りにより、住民の過重負担を回避する。
1月1日現在、県内19市の下水道使用料の月額基本料を見ると、1185円の飯田市が最も安い。諮問した改定額の1540円は11番目にあたる。