飯田下伊那地域の人口(現在16万9000人余)は、今後10年間で10%減り、2020年には15万2000人まで減少する見込みとなっていることが28日、NPO法人しんきん南信州地域研究所の調べで分かった。景気低迷に伴う雇用情勢の悪化で、社会増減が従来より大きくマイナスに転じていることから、国立社会保障・人口問題研究所の08年の予想を下回る結果になった。生産年齢人口の低下が深刻化するとの予測から、「リニアなどを見据え、人口動態を踏まえた施策が必要だ」と指摘している。
調査は、同研究所の吉川芳夫主席研究員が実施。毎月人口異動調査や県衛生年報などから、年齢別人口や異動状況、出生率などから導いた。
まとめによると、飯伊の総人口は10年ごとに10%程度減る見込み。5年後に16万1799人、10年後に15万2700人、20年後に13万3560人と減少を続け、30年後には圏域人口が現在の7割を下回る11万4984人まで減少するとした。
飯伊の総人口は1970年から2005年ごろまで35年間にわたって均衡状態にあったものの、05年以降は急激に減少線を描いている。
吉川研究員は、過去の均衡状態を「平均寿命が延びたことにより、人口が維持された」と分析。長寿命化によるプラス効果が収束したことで、再び、下降線を描き始めたと指摘した。
研究員はまた、20年前と現在の年齢別人口の増減も比較した。高校を卒業した若年層の多くが地域外に流出している状況に変化は見られないものの、20歳―28歳の回復率に違いが見られた。
20年前は、都市部に流出した人口の復帰や社会増で20―28歳代の人口が回復曲線を描いていたものの、現在は大きな回復が見られず、生産年齢人口全体が低水準になっている。
研究員は「従来は都市部に流出した若年層が、10年程度で帰郷するケースが多かったが、近年はほとんど戻らない状態にある」と説明。加えて、「雇用情勢の悪化に伴う社会動態の減少で、飯伊に職場を求めて異動してくる若年人口や外国人が皆無になっている」とし、そのことが、飯伊の人口問題を考える上で最も重要な点だとした。
考察では「人口減の予測を単に悲観することなく、現状を受け止めた上で、地域の文化や自然環境を維持する適正な人口とその暮らしを支える産業の確立が必要だ」とし、「リニアの開業なども視野に入れつつ、人口動態を踏まえての施策展開が必要だ」としている。