市田柿の生産が盛んな飯田市三穂地区が深刻な凍霜害に見舞われている。特に被害が大きい立石では、壊滅的な打撃を受けて「柿収入がまったく見込めない」という嘆きに加え、「木が駄目になる恐れもある」「これを機に生産を止める人もいるのではないか」と危ぐする声も聞かれ、行政と農協に早急な対応を求めている。
場所によっては氷点下に達した4月13日、22日の低温で凍った芽の成長が望めない立石の柿畑は、グレー一色。わずかに芽が出ている木もあるが「栄養過多の実は市田柿に加工できない」という。
地元農家によると伊豆木でも5割以上の柿畑が被害に遭い、アスパラやモモ、ナシ、リンゴへの被害波及も懸念されている。
三穂では全世帯の6割にあたる約270戸が市田柿を生産しており、昨年度はJAみなみ信州と下伊那園協に市内生産分の18%程度に相当する約147トンを出荷した。
これ以外にも直売、ネット販売分があり、地元の生産者は「地区の被害は製品の出荷ベースで数億円になる」と肩を落としている。
市田柿と少量のアスパラが農業収入の大半を占めるという伊豆木の70代男性は、「事態の深刻さが伝わっておらず、関係機関の対応も遅いので先々が不安。被害状況の調査と技術指導と当面の管理、借入れの利子補給といった対策を早急に講じてほしい。成らないことは明らかだ」と話した。
市田柿は果樹共済の対象外で、昨年の生産量に戻すには3年はかかるとされる。立石の兼業農家を守る70代男性は「何十年も市田柿をやってきたけれど全滅は初めて。今年は昨年の収入で食べていけるが、問題は来年以降」と頭を抱え、「柿むき機が更新できず、これを区切りに生産をやめてしまう人も出そうなことが地区としても怖い」と話す。
JA営農部では「ナシなどの他品目も含め、どのような対応ができるか検討中。生柿全体の収量減が予想されるため、放置されている園での生産対応をなどを促し、量の確保に努める。生柿は農家共済がないため、生産者の被害補填がなされない。被害の影響が3年先まで長期に及ぶため、先日は国会議員に対して対応の検討を求めた」としている。