県社会福祉協議会主催の「多文化共生を考えるフォーラムinいいだ」が7日、飯田市松尾公民館で開かれた。行政関係者や地域住民など約30人が参加し、座談会や講演を通じて、在日外国人や帰国者たちの現状や課題、多文化共生の推進事例などを把握。日本人、外国人と分け隔てることなく、共に支え合って生活できる地域づくりへの視点や方策を話し合った。
座談会では、飯伊で生活する日系ブラジル人や中国帰国者二世の3人のほか、同市や同市社会福祉協議会の職員ら計8人が「話題提供者」役を担当。NPO法人多言語センターFACIL(神戸市)の吉冨志津代理事長が議論を調整する「ファシリテーター」役を務めた。飯伊の社協関係者や日本語教室の主宰者、一般住民らも輪になって座り、意見や思いを寄せた。
帰国者たちは仲間たちの現状も交え「同じ地域で仲良く暮らしたいという思いはみんな同じ」と強調。「言葉の問題も大きいが、まずは仕事がなければ暮らせない。様々な障壁を低くしてほしい」と述べ、安定してやりがいを持って働ける場を望む声が多いことも伝えた。
多文化共生を進める事例として、中国帰国者らも生活する松尾常盤台地区で今月から始まった「おしゃべりサロン」を紹介。言葉や文化の違いを楽しみ、地域住民同士が気軽に交流できる機会の大切さが指摘された。
一般の参加者たちも、学校や組合文書の翻訳、通知などの身近な事例を紹介。「少しのきっかけや工夫で、地域の多文化共生の輪は広がる」「日本人の子どもたちも異文化を学べるイベントを増やしたい」「何か問題が起きた時には、類似した解決事例を活用することもできる。情報共有の多彩なネットワークづくりが重要」などの意見を寄せた。
同市男女共同参画課多文化共生係の係長は昨年3月11日の東日本大震災の発生直後、まっ先に「支援できることはないか」と問い合わせてきたブラジル人の行動を引き合いに「(日本人も外国人も)困った時は共に支え合う仲間と捉える意識を持つことが大事」と話した。
吉冨さんは「ごみ出しや騒音の問題などは、どの地域でも起こり得るが、単にルールや文化を知らないだけの場合が多い。まずは理解してもらう一歩を踏み出して」と期待。「個人の対応やボランティア(無償)では疲弊することもあり、NPOや行政などを有機的に活用してほしい。社会に壁をつくらないことが大事」と呼び掛けた。