東京電力福島第一原発事故の影響で風評被害を受けた肉牛農家が合同で損害補償請求するための説明会が17日、飯田市鼎のJAみなみ信州営農部であった。「全農家を補償対象とすべき」とする国の認定に長野県が含まれなかったため、JAグループが発足した対策協議会が県内の被害農家から委任を受け、3月までに賠償請求する計画だ。
県内のJAグループが発足した「東京電力原発事故農畜産物損害賠償対策協議会」が長野、佐久、塩尻会場に続いて開催。JAみなみ信州の部会員を中心とする50人が出席した。
JA全農長野畜産酪農部長らが、被害額の算定や協議会に請求を委任するための手続きの方法などを説明。3月中旬から下旬にかけて東京電力に請求するとのスケジュールを伝え、同月9日までに書類を提出するよう求めた。
肉牛の出荷額は餌となる稲わらから放射性物質が検出されたことなどを受け、風評が広がり、低迷している。
政府の損害賠償紛争審査会は、稲わらから暫定規制値を超える放射性物質が検出された17道県を「全農家を対象とすべき」としたが、長野県は含まれないため、個別交渉が必要となっている。
協議会は「長野県も17道県と同様」とし、東電に対して損害賠償に応じるように求めてきたが、東電は昨年12月9日に「同様の状況に当たらない」との見解を表明。協議会が再度申し入れをしたところ「重く受け止め、協議をしたい」と回答した。
こうした経過を踏まえ、協議会は被害農家から委任を受け、賠償請求、交渉、和解手続きを進めたい考え。和解に至らない場合は賠償紛争解決センターに仲介を申し立てるとしている。
質疑では参加者たちから「高額取引されている牛でも、価格が低迷している」「国にも賠償請求できないか」などとする意見が出された。
JAみなみ信州の矢澤輝海組合長は「グループを挙げて交渉に臨む体制が整った。連携しながら取り組んでいきたい」と話していた。