新型コロナウイルスの感染拡大が飯田下伊那地域の飲食・サービス業をはじめとするさまざまな業種に大きなダメージを与えている。飲食店は店内での提供からテークアウト・宅配にシフトチェンジすることで、経験したことのないピンチを乗り切ろうと努力する店が増えているが、臨時休業に入る店も目立ち始めた。
「飲食店は今、存続の危機にあるよ」│。納入業者の男性は硬い表情で語り始めた。「2月は宴会や会合がなくなり、大きな所に影響があったが、小さな店や新規開業した店は個人客がいたし、3月に入ってもまだよかった」。
潮目が変わったのが、県飯田保健所管内で最初の新型コロナウイルス感染症患者が確認された3月27日。飯田市内のある飲食店は「感染者が来店した」という誤った情報の被害に遭い、同月29日から客足がぱったり途絶えて売り上げが激減した。
アルバイトスタッフからSNSに「デマ」が書かれていると聞き、保健所に問い合わせたが、来店した事実はなかった。
状況は刻々と変わっている。現在はデマとは関係のない店も売り上げ減に苦しみ、テークアウトや宅配に力を入れつつ、気心の知れた客の支えで営業を続けている。
常連の多い人気店も「宴会はキャンセルになるし、昼夜ともお客さんが減った」と落胆の表情。別の経営者はまず営業時間を短縮し、続いて夜の営業をやめ、近く臨時休業に入る。テークアウトは「注文があれば受ける」という。
デマの被害に遭った店主は「外食しにくい立場や高齢の同居家族への影響など、不安な気持ちは分かるから『来てください』とは言いにくいけれど、知人やこれまでのお客さんが『テークアウトだけでも』と力になってくれたり、応援の電話、メッセージをくれて本当にありがたい」と感謝を口にし「消毒などの対策は万全。自信を持って営業を続けたい」と前を見据える。
店主は同じようなデマの被害に遭った店や感染してしまった人のことも「悔しいと思う気持ちは分かるし、かわいそう」と気遣い「どうか不確かなことを軽率に言ったりしないでほしい」と訴えている。