丘の上結いスクエア(飯田市東和町)の公共空間「ムトスぷらざ」への機能移転に伴い、4月30日に閉館した飯田市公民館のクロージングセレモニーが同日、吾妻町の同館であった。関わりのある市民と有識者がトークセッションと講演で1976(昭和51)年の開館から46年間の歩みを振り返り、移転後のあり方を展望した。
トークセッションには7人が登壇し、高校生講座への参加をきっかけに進路を決めた大学4年生の田代直己さんは「カンボジアスタディーツアーは大きな分岐点だった。公民館は第三の居場所となり、自分の知らない飯田市を教えてくれた。地域の大人との関わりから、どんな大人になればいいかを学んだ」と振り返った。
日本語教室「わいわいサロン」で学んだことを生かそうと、地域のボランティア活動にも参加するようになった市川マリさん(中国出身)は「友達が増えてストレスが減り、日本語に少し自信がついた」と成果を喜んだ。
飯田の公民館活動に造詣が深い東京大学の牧野篤教授は、市職員として公民館活動に長く関わった長谷部三弘さんが示した「行政は縦糸で地域は横糸。公民館は教育機関で、地域が縦糸に横糸を織り込む力をつけるのが役割」について「ここに全てがつながってくる。今後も積み上げてきたものをもとに社会教育活動を活発にすれば、一人一人が地域の主役になれる」と期待を語った。
長谷部さんは移転後について「新しい方向に期待する一方、シンボリックな建物がなくなることへの危ぐがあることをあえて伝えたい」と話した。
運営審議会の細山俊男会長は「この建物は閉館するが、飯田らしい運営の仕方や存在を全国に知らしめ、新しい公民館を一緒につくっていきたい」、小西盛登館長は「今日の成果は新しい施設での実践につなげたい」と話した。
特別講演会では牧野教授が「みんながつくる社会~人生100年、AI、そしてポストコロナ時代の公民館と社会教育を考える」と題して話し、午後の部ではホールを利用してきた上郷コーラス、飯田カネト合唱団、コール・ブリランテ、飯田プルメリア教室、竜丘コーラス、ふれあいコーラス、浜井場コーラスの7組が最後のステージ発表に臨んだ。
招待者のみで開き、六十数人が来場。1階ロビーの寄せ書きコーナーには、紙片に書かれたさまざまな思い出が掲示された。
ムトスぷらざは19日にオープンする。
◎写真説明:関わりや思い出、得たものを語り合った