ウクライナからの避難民9人を受け入れている高森町と総合格闘技団体「空手道禅道会」(総本部・飯田市上郷黒田)は6日、町内で会見した。施設に滞在する9人も出席し、町への感謝を述べるとともにロシアによる軍事侵攻を受ける現地の様子や避難までの生活などを語った。
町が受け入れたのは、禅道会のウクライナ支部で空手を学ぶ3~19歳の会員6人とその母親3人の計9人。いずれも首都キーウ南西の都市から避難してきた。ポーランドの首都ワルシャワから空路で移動し、1日に町内に到着。現在は湯ケ洞に滞在している。
子どもたちは道着姿で会見に参加。町に避難してから描いたという停戦と平和を訴えるポスターを披露した。町での生活について聞かれると時折笑顔を見せることもあった。
ウクライナ西部の都市に住んでいたスタシウク・ディナさん(36)は「実際に空襲されることはなかったが、毎日何度も警報がなり地下に避難する生活は辛く、子どもたちも怯えていた」。海外への渡航は初めてで不安もあったが「日本は自然と人々の心が美しく感動している。いずれは難民としてではなく観光で日本に来たい」と語った。息子のダビド君(8)は「安心して寝て起きられることがうれしい。町での生活に不自由は感じない」と笑顔で話した。
ボロセンコ・オレナさん(44)は「電気やガスの心配をせず、暖かい家で生活できている」と受け入れに感謝。「戦争が始まったときは皆悪い冗談だと思っていた」などと振り返った。息子のアルチョム君(13)は国に残った父親について「1日も早く戦場から帰ってきてほしい」と願った。
両親が戦地でボランティア活動に従事しているクズニェツォバ・カテリーナさん(19)は「ウクライナ国内でロシア人が酷い目にあっているというロシアの主張は嘘」とし、「(ロシア軍に)町が破壊され、罪もない人たちが死んでいる」と現状を訴えた。
町によると、9人は3日に飯田市内の病院で新型コロナウイルスの抗原定量検査を受けて陰性を確認。施設内待機が解除された。5日には子育て拠点「あったかてらす」のイベントに参加した。
宿泊施設に滞在する2週間で、長期滞在に向けた在留資格の変更など必要な手続きを済ませる。その後は町営や県営住宅などに居住し、町などが経済的に自立した生活ができるように支援する。
壬生照玄町長は「自立して町で生活できるまでには困難がある。できることをして町で過ごせてよかったと思えるよう取り組む」と述べた。
◎写真説明:町の会見に出席するウクライナ避難民の母子