
2曲を提供&参加
“アーヤと魔女 SONGBOOK”
26日にCD発売!
【取材・文 仲井勇司】

「アーヤと魔女SONGBOOKライムアベニュー13番地/EARWIG」のCDジャケット
昨夏、トキワ劇場(飯田市)ほか全国の映画館で公開されたスタジオジブリ制作の3DCGアニメ映画「アーヤと魔女」(宮崎吾朗監督)。同映画のサウンドトラックに続く音楽作品集の第2弾として「アーヤと魔女 SONGBOOK ライムアベニュー13番地/EARWIG」が1月26日にCDで発売されますが、飯田下伊那地域出身のGLIM SPANKY(グリムスパンキー=松尾レミ&亀本寛貴)が2曲を書き下ろし、同アルバムに収録されました。
2021年8月の本欄で同映画サントラに亀本さんがギター奏者として単独参加したことを紹介しましたが、宮崎監督がロック好きでグリムスパンキーのファンでもあったことから追加オファーに発展。改めて松尾さん、亀本さんの二人がそろってこのアルバム収録に参加しました。劇中に登場する架空のバンド「EARWIG」の音楽をグリムスパンキーら5組のミュージシャンが全10曲で具現化する―。そんなコンセプトで制作された作品集です。
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同映画は意地悪な魔女のもとでたくましく生きる少女アーヤの奮闘を描いていますが、アーヤを助ける黒猫や、アーヤが魔女と暮らす館も物語の重要な要素。グリムスパンキーは宮崎監督のオファーに沿い、この「黒猫」と「館」をテーマに「A Black Cat」、「The HouseinLimeAvenue」の2曲を作り、レコーディングしました。

「悪魔を憐れむ歌」が収録されているザ・ローリングストーンズのアルバム「ベガーズ・バンケット」(1968年発売)
まず印象的なのが「A Black Cat」という曲のノリの良さ! 松尾さんの「1970年代的な音楽にしたい」という意向を受け、亀本さんが「リズミックでグルーブが強い感じに」と曲調を決定。映画の「魔女」というキーワードも踏まえ、世界的ロックバンド、ザ・ローリングストーンズの名曲「悪魔を憐れむ歌」の軽快なリズムパターンにもヒントを得ながら作曲していったそうです。
松尾さんは「(黒人女性歌手の)アレサ・フランクリンが歌うメロディーやゴスペル風のハーモニーを意識した」といい、フレーズの合間にキレのいいコーラスを散りばめる工夫も。二人はユニットとして昨今、ブラックミュージック的な音楽性も追求していますが、「歌のメロディーの感じが今までになくリズミックになった」と、曲全体のアレンジを担う亀本さんも納得のリズム&ブルースに仕上がっています。
一方の「The House in~」は、松尾さんの絵画的な描写が際立つフォーキーな一曲。歌われた月夜の景色について「アイルランド民謡をイメージしたりしながらコンセプチュアルに構築していった」と松尾さん。70年代初頭の英国フォーク歌手、ニック・ドレイクの音楽もモチーフになったそうで、亀本さんは「肩の力を抜いて松尾さんのオーダーを再現した」。アコースティックギターの柔らかな音色で“松尾ワールド”を支えています。
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主人公のアーヤと黒猫のトーマス
©2020NHK,NEP,Studio Ghibli
楽曲はCD(価格3千円=税込み)以外にも音楽配信サイトからダウンロードして購入することが可能。
ところで気になるのが二人の好きなジブリ映画。今回関わった「アーヤと魔女」は別として「お気に入りのジブリ映画」を尋ねると、松尾さんはかなり迷いつつ「魔女の宅急便」「耳をすませば」「思い出のマーニー」の3作品に言及。特に「魔女の宅急便」については「ほうきやデッキブラシで空を飛ぶシーンをみんなでまねしていた」と子どものころに夢中になった記憶を回想。亀本さんが「僕は『風の谷のナウシカ』か『もののけ姫』かな…」と言いかけると「あ、“もののけ”も良いよなー!」とすかさず横やりも。
名作ぞろいのジブリ映画で「一番のお気に入り」を決めるのが難しい心境は、もちろんお察しします。