飯田市中央通りのセンゲキシネマズで上映中の映画「瞽女(ごぜ) GOZE」の瀧澤正治監督(71)が2日に飯田入りし、舞台あいさつした。平日の日中ながら26人が来場し、瀧澤監督は「(かつて瞽女がいた)飯田の皆さんに映画を見てもらい、こうしてあいさつできる幸せは口では言い表しようがない。製作してよかったと心から思える」と感謝した。
瀧澤監督はCMディレクター、映画予告監督を経て、57歳で映画監督デビューした苦労人。「瞽女 GOZE」は、晩年に人間国宝になった“最後の瞽女”小林ハルさん(1900―2005年)の生き方や人生観に感銘を受け、17年かけて公開にこぎ着けた。
瀧澤さんは「地味な題材なので大手配給会社にはことごとく断られたが、『苦は楽のタネだよ』というハルさんの言葉を思い出しながらくじけず、あきらめずにやってきた」「人生いい時、悪い時があるが、悪いだけじゃない。一生懸命やっていると良い人に会える」と振り返った。
映画はロケ地・新潟を振り出しに、これまで全国26館で上映。飯田での舞台あいさつは予定になかったが、「飯田瞽女」の歴史にも触れた本紙の記事を読んで「いてもたってもいられなくなり」(瀧澤さん)、急きょ決めた。
自身が人形作家の故・川本喜八郎さんのファンであり、知人のディレクターが飯田出身のため、以前から親近感のある街でもあったと明かし「映画は心から出て、人の心に届けるもの。これからもそういう作品を作っていきたい」と話した。
市内の女性は「子どものころ、瞽女さんが三味線につかまって歩いていた姿を見た。歌と演奏を喜んで聴いたことも覚えている。寒い時期だった気がする」などと瞽女に関する記憶を語った。
センゲキでの上映は9日まで。
◎写真説明:あいさつする瀧澤監督