売木村の宝蔵寺観音堂で5日、村の無形民俗文化財「念仏講」の初回向が行われた。例年は立春明けから春彼岸明けまでの48日間にわたり、村民らが毎日念仏を唱えて村内の安全や五穀豊穣を祈願するが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、昨年同様、人数を制限し初回向、中回向(27日)、終回向(3月23日)の3日間のみ行う。
村教育委員会によると、1760(宝暦10)年ごろ、村一帯が凶作に見舞われて多くの犠牲者を出す疫病が発生したため、村人が観音堂に「三界萬霊」を祭り祈ったことが始まりとされる。過去に1度だけ念仏講を行わなかった年に疫病が流行り、多くの人が亡くなったという伝承もあるという。
初回向には、村内の高齢者らでつくる信仰部のメンバーら8人が参加。密を避けるため例年の半分ほどの人数とした。澤村久之住職とともに般若心経を読経した後、ご詠歌や和讃を約1時間唱え、無病息災や五穀豊穣を願った。
信仰部の代田昭代表(93)は「昨年に続き規模を縮小しての開催となってしまったが、新型コロナが早く収まるよう、願いを込めて唱えた」と話した。
◎写真説明:観音堂で行った念仏講の初回向(村教委提供)