国重要無形民俗文化財の「大鹿歌舞伎」を保存する大鹿村で3日、大鹿中学校の全校生徒14人による歌舞伎公演があった。生徒らが中学校の特設舞台で「絵本太功記十段目尼ケ崎の段」を上演。保護者ら観客からのおひねりが飛ぶ中、熱のこもった芝居を繰り広げて会場を沸かせた。
江戸時代から伝わる地芝居「大鹿歌舞伎」を継承する活動の一環。前身の一つ鹿塩中学校時代の1975(昭和50)年から続け、46年目という。今年も総合的な学習の時間を利用して4月から稽古を重ねてきた。
演目は本能寺の変で裏切り者となった明智光秀と家族がモデルで、大鹿歌舞伎でも上演されている悲劇。「逆賊だ」と諭す母親や、傷を負って命を落とす息子十次郎、一部始終を目にして悲しむ十次郎の妻初菊の繊細な心の動きから、羽柴秀吉と決戦を約束する躍動感までを全身で表現した。
役者や太夫、黒子に分かれ、大鹿歌舞伎愛好会から教わった。念入りに化粧をし、きらびやかな衣装を身に着けて登場すると、長いせりふや細かな所作もこなした。
光秀役の3年男子生徒(14)は「長く練習してきたのでほっとしている。悔いのない演技ができた」。初菊を演じた3年の女子生徒(同)は「大鹿歌舞伎を伝承することの大切さを学べた」と話した。
愛好会によると、役者の半数は中学時代の経験者という。メンバーの松浦宇多恵さん(80)は「立派な公演だった」と目を細めていた。
◎写真説明:おひねりが飛ぶ中で熱演