天龍村の向方地区で14日、2006年を最後に行われなくなっていた「かけ踊り」が復活し、地区内の長松寺に、輪になって踊る踊り手の掛け声をはじめ、笛や太鼓の音、踊り手を囲む地元住民らの歌や念仏が響き渡った。
紙飾りの付いたかさをかぶった踊り手が、太鼓や傘などを手に笛の音色に合わせて踊り、新仏や先祖を供養する。地区の過疎化、高齢化に伴う担い手不足により実施できなくなっていたが、同地区で1月に行われる湯立神楽「お潔め祭り」(国重要無形民俗文化財)に参加する、村外の若者らの協力を得て16年ぶりに行われた。
お潔め祭りは近年、祭りや村に関心を持つ県内外の若者らが舞い手や担い手として参加し伝統文化の継承を支えている。地区住民でつくる祭り芸能部の村松久一部長(72)によると、今年のお潔め祭り終了後、住民と若者らとの間でかけ踊りの復活が話題となり、以来準備を進めてきたという。
学生ら県外から参加する人にとって交通費が大きなネックとなっていたが、本年度は県内の文化芸術活動を支援する「信州アーツカウンシル」(一般財団法人長野県文化振興事業団アーツカウンシル推進室)の助成金事業として採択され、交通費に充てることができたことも復活を後押しした。
村松さんは、懸命に踊る若者や、供養の歌や念仏を響かせる地元住民らの姿を見つめ「来年以降の継続には課題が残るが、復活できると思っていなかったのでとても感慨深い」と話し、懐かしい風景に目を細めていた。
◎写真説明:長松寺で行われたかけ踊り