天龍村に伝わる霜月神楽(国重要無形民俗文化財)の一つ、「向方のお潔め祭り」が3日、向方地区の天照大神社で開かれた。3年ぶりの通常開催で村内外から観覧客が訪れる中、神前に供えた湯釜を囲んで老若男女が舞を奉納。舞で清めた湯を神々に献湯し、氏子らの無病息災を願った。
面形の無い湯立神楽で、氏子らが扇、鈴、剣などを手に「花のようとめの舞」「四ツ舞」「三ツ舞」「古伝の舞」「火伏せ」など、多彩な湯ばやしの舞を舞う。
過疎化が進む同地区は現在約40戸余り。高齢化もあって、祭りの継承に向け担い手の確保、育成が課題となっているが、近年は祭りへの関心を持つ県内外の若者らが、祭りをきっかけに地区との交流を続け、住民とのきずなを深めている。
今年も村主催の体験講座「秘境大学」の受講生らが舞い手や裏方として参加。12月には村で合宿を行うなど練習を積み重ね、この日に臨んだ。
午後4時ごろから約20人が代わる代わる舞を披露。小学校低学年のころから舞い手を務めている飯田OIDE長姫高校1年の男子生徒(16)は「地区外から多くの人が参加して盛り上げてくれてうれしい」と喜び、「皆に楽しんでもらえるようきれいに踊ることを心掛けている」と話した。
同地区祭り芸能部の村松久一さん(73)は「人口減少と高齢化が進み、祭りを継承していけるか、ぎりぎりのところにある。東京や愛知などから若い人が集まり、我々の世代が残っているうちにどう伝統を伝えていくかが課題」と語った。
天龍村の霜月神楽は、向方のお潔め祭りの他、1月4日から5日にかけて行う「坂部の冬祭り」と、5日から6日にかけて行う「大河内池大神社例祭」がある。坂部と大河内は新型コロナウイルス感染予防の観点から、今年も氏子のみで行う。
◎写真説明:天照大神社で開いたお潔め祭り