文化庁は1日、阿南町の「和合の念仏踊り」「新野の盆踊り」などを含む24都府県41件の国指定重要無形文化財をまとめた「風流踊(ふりゅうおどり)」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関が無形文化遺産登録を勧告したと発表した。28日から12月3日までモロッコで開かれるユネスコ政府間委員会で、登録が正式に決定する見通し。
風流踊は、華やかな人目をひくという「風流」の精神を体現し、衣装や持ち物に趣向を凝らして歌や笛、太鼓、かねなどではやし、踊る民俗芸能の総称。除災や死者供養、豊作祈願、雨乞いなど、安寧な暮らしを願う人々の祈りが込められている。
それぞれの地域の歴史と風土を反映し、多彩な姿で受け継がれている踊りは、地域の活力として大きな役割を果たしている。一方で人口減少や少子高齢化による担い手不足が共通の課題になっており、登録が実現すれば、伝統継承への励みになりそうだ。
和合の念仏踊りは2014年に国重要無形民俗文化財に指定された。8月13~16日の間、毎晩踊る太鼓を中心とした念仏踊りで、地区の神社や寺などを巡り各所で踊る。新盆供養と念仏踊りが結びついた形態を持つ。
新野の盆踊りは1998年に指定。8月14~16日のそれぞれの夜から翌朝にかけ、三味線や太鼓などの楽器伴奏を伴わず、夜を徹して踊る。17日早朝にはかねと太鼓を打ちながら精霊を送り出す行事も行う。2020、21年は新型コロナウイルスの影響で中止となり、今年、3年ぶりに開催した。
新野高原盆踊りの会の山下昭文会長は「世界中の人に新野の盆踊りを知ってもらう機会になる」と歓迎。新野地区では人口減少とともに祭りの参加者も減り続けているといい「見るだけでなく多くの人に参加してもらえれば」と期待を寄せた。
町教育委員会の勝又司教育長は「勧告は大変喜ばしい。それぞれの地域に受け継がれてきた貴重な盆行事を後世に継いでいかなければと改めて感じた」とし、「町民が誇りに思えるよう、両保存会に寄り添いながら支援していきたい」と話した。
南信州民俗芸能継承推進協議会の事務局は「文化庁の資金的な支援が受けやすくなり、担い手にとっても誇りを持って意欲的に取り組めるようになる」と意義を強調。「今回の外部の評価が地域の人たちに届き、誇りになってほしい」と願った。来年2月の民俗芸能フェスティバルは、風流踊の1つ「跡部の踊り念仏」を継承する佐久市の保存会も招き、3つの踊りを上演する登録記念イベントの開催を予定している。
無形文化遺産の登録を巡って、日本は20年に和合の念仏踊りを含む計37件をひとまとめにして登録を提案したが、ユネスコの審査対象にならなかった。今回は新野の盆踊りなど4件を新たに加え、昨年に再提案していた。
◎写真説明:林松寺境内で行われる和合の念仏踊り